「よし、一生鹿と生きていくぞ」と決めた【鹿の解体×音楽イベント1万字ルポvol.4】
―[鹿の解体×音楽イベント1万字ルポ]―
「水曜日のカンパネラ」という音楽ユニットが11月4日、渋谷のライブハウス「WWW」で主催した音楽イベントで「鹿の解体」を行った。今回のイベントは「決してグロテスクなものを見せたいわけじゃない」と語るコムアイ氏。イベント当日の一日に密着した。
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トークショーでは、なぜコムアイ氏が鹿の解体に向き合うようになり、イベントで鹿の解体をするに至ったのかが、しっかりと本人の口から語られた。ここは対談形式で紹介しよう。
コムアイ:獣が溢れているというのを最近よく聞くんですけど、山で鹿や猪を狩る人が昔に比べて減っていて、畑に降りてきちゃったりしているというニュースは皆さん、ご存知だと思います。そういう理由で鹿や猪が殺されているんですけど、食べられていないんですよ。殺されてしまうのに捨てられるなら、まだ食べられたほうがいいと思っていました。実際に食べてみておいしいのかというのも気になっていたんですが、食べてみると私好みの味で、『よし、一生鹿と生きていくぞ』と決めたんです(笑)。
佐野氏:獣害問題に関しては、僕の住んでいる八ヶ岳の南麓はすごく鹿が増えちゃって。八ヶ岳の2000mぐらいに生えている高山植物まで鹿が食べちゃっているんですね。それで、鹿が里に下りてきて、農家で生計を立てている人たちの作物まで食べてしまう。みんな自己防衛をしてネットを張ったりしているんですけど、それでも鹿を獲りきれないので、猟師さんたちに頼んで鉄砲で撃ってもらっているんですよ。でも、猟師さんたちはそんなに食べられないですよね。一頭獲ればけっこうな量の肉が手に入りますし。なので、そのまま山に埋めているということを知って、『だったらみんなに食べてもらったほうがいいんじゃないの』ということで、解体を始めたんですよ。
解体ワークショップをはじめてみたら、けっこうな人が来るんですよ。その代り、『楽しく解体して、食べて終わりだよ』という考えでやっています。楽しみながらご飯を食べたい。そこにただ、解体がある、血がある、という考えの人は楽しいと思いますけど、『うーん……』となってしまう人も中にはいると思います。ただ、それは人それぞれの意見なんで。
コムアイ氏:もしかしたら、ライブハウスで解体をしたら倒れたり、泣いちゃう人もいるかもしれない、と思っていました。そういう人がいても当たり前というか……だって、普段見ないじゃないですか、解体は。そんなものは見ないで肉を食べるのが当たり前ですから、東京では。でも、「それでも見たい」という人がここの中に10%でもいれば、ここでやる価値があると思っていたんですが……思っていた以上に皆さん見たがってくれたみたいで(笑)。
さて、解体は終わったが、音楽イベントはこれからがメインイベント。大森靖子氏がギター一本で、会場の雰囲気をガラリと変えた後、20時20分についに『水曜日のカンパネラ』の出番だ。
ステージに再び登場したコムアイ氏は一曲歌い終えると、「私が観たかったイベントになりました」と満足げ。「もう皆さんも満足感いっぱいじゃないですか? ちょっと疲れちゃったな。私は鹿の解体のあとに満足感がピークを迎えてしまいました」と大トリとは思えない脱力ぶり。だが、この力の抜けた感じも彼女の魅力らしく、観客は笑って受けている。
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