「防潮堤工事を凍結して住宅再建を」陸前高田市住民の声
―[3.11[進まぬ復興]現地ルポ]―
東日本大震災から3年、マスコミ報道もかなり少なくなってきているが、状況はそれほど変わっていないという。震災復興は今どうなっているのか? 防潮堤は本当に必要なのか? 現地の声をリポートする!
<陸前高田市>工事費・人件費の高騰が住宅・生活再建を妨げる!
岩手県南東部に位置する陸前高田市は、東日本大震災で市役所周辺の市中心街が壊滅、全世帯の7割以上が被害を受けて住民の約1割が犠牲となった。だが、ここでも市中心街は更地のままで、一般道をダンプカーが行き交う“工事ラッシュ”が続いていた。
「奇跡の一本松」で有名な高田松原海岸では、高さ12.5mの防潮堤(総事業費230億円)や巨大な橋梁の建設が始まり、仮設市役所のある内陸側でも、山を切り崩して最大8mの盛り土をする高台移転事業、仙台市と八戸市を結ぶ「三陸自動車道」の建設(総事業費1兆円)が本格化していた。
仮設市役所を訪ねると、ここでも入札不調が深刻な問題になっていることがわかった。「今年度の入札不調は、132件中23件で増加傾向にあります。原因は資材不足や人手不足です」(市財政課)。
今でも仮設住宅での生活を続ける佐藤一男さん(米崎小学校仮設住宅の自治会長)はこう話す。
「私が移る予定だった高台移転工事も去年12月に入札不調となりました。学校建設の工事が入札不調となったことには心が痛みます。仮設住宅での生活が長期化するのなら、せめて地域住民が集まる場所がほしい」
3月1日、街づくりに関する住民集会が市内で開かれ、説明役の市職員に加え、地元選出の黄川田徹衆院議員(岩手三区)と佐々木茂光県議が出席した。質疑応答では、仮設住宅に住む小野寺彦浩さんから「家が建てられるようになるまで5年も待てない。建築費が坪単価40万円から70万円に上がって、家が建てられない」という発言が出た。この集会の主催者で「市民が考える復興の会」事務局の菅野明宏さんはこう話す。
「住民からは『巨大防潮堤の工事を凍結して、その分の資材と作業員を住宅再建関連にそっくり回せないものか』という声が出るほどです。このままでは人口減少が止まらずに、ゴーストタウンを結ぶ巨大道路と巨大防潮堤ができるという事態になりかねない。高台移転事業で宅地ができても、住宅建築費を調達できない被災者も多数います。それで、いかに家を安く建てられるようにすることに取り組んでいます。例えば、仮設住宅の建材を利用できるように政府に陳情をしたり、(現状で何とか捻出できる範囲の)『500万円住宅建築』ができないかとの検討も呼びかけています」
こうした事態について黄川田議員も「(建築費高騰の原因は)復興事業があまりに集中していること。公共事業を絞り込むなど、メリハリをつけることが必要だろう」と話す。大規模復興事業が、間接的に住民の住宅・生活再建を妨げている。公共工事の全体量を抑制することが重要だ。
【陸前高田市】
東日本大震災で1555人が死亡、233人が行方不明となった。現在の人口は2万541人(’14年1月31日時点)で、震災前人口の2万3302人から約12%減
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