大麻で放射能除染ができるってホント?
放射能除染効果のある植物として、注目されているのが大麻だ。発端は日本の原発事故を受け、3月13日に放送されたアメリカの大麻合法化団体のラジオ番組。ホスト役の男性がこう発言した。
「86年のチェルノブイリの事故後、ウクライナとアメリカの企業が土壌から放射性物質を取り除く大規模なプロジェクトとして、産業用大麻を栽培したのである」
産業用大麻とは、多幸感をもたらす化学物質THC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量が少なく、繊維などの産業に利用できる大麻のこと。日本でも免許制で栽培が認可されている。
この発言は日本語に翻訳され、ネットに公開すると瞬く間に広がった。ツイッターでは、
<除染と心のケアをしてくれる大麻は神の草だ。合法化すべし>
<大麻は除染だけでなく放射性物質を分解してくれる>
などと尾ヒレがついて拡散。そして、5月に開催されたデモにまで飛び火し、「福島にひまわりよりも大麻を植えろ」というシュプレヒコールが巻き起こったのだ。
大麻の個人使用容認を求める市民団体で、デモを主催した『カンナビスト』の共同代表者・麻生結氏が言う。
「そういう意見の人もいます。大麻による除染の有効性については、まだ科学的な根拠の有無がはっきりしていません。その一番の問題点は、厳しすぎる大麻取締法のため、大麻除染の実験ができないことだと思います」
デモで主張されたジャンキーの戯言……もとい大麻除染が、実際にプロジェクトになり得る可能性がゼロではないというから驚く。
バイオマス資源のエネルギー利用を目指すNPO法人「バイオマス産業社会ネットワーク」理事の赤星栄志氏が言う。
「ほかの植物よりも産業用大麻の優れている点は放射能を吸収した後、繊維や燃料として二次利用できること。種子が吸収したセシウムは繊維などに移行しないそうです。こうした除染に関する科学的なデータをウクライナから取り寄せ、実験ができるように福島県知事に働きかけているところです」
大麻合法化を期待した人、あくまで産業用大麻であることを忘れずに。
10/4発売の週刊SPA!「放射能除染をめぐる(狂)都市伝説徹底ルポ」では、大麻以外にも、微生物、きのこ、ホメオパシー、EM菌ほかの除染効果をめぐる悲喜こもごもを追った。
取材・文/週刊SPA!編集部
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