大阪出身の“ナイーブなチンピラ”四万十川友美、ペニスを歌う
大阪から変わった奴が出てきた。何を考えているのか、不穏な眼つきをして、震えている青年。生ギター背負ったチンピラ。でも、それだけじゃない。このチンピラの発する音は、声は、ガラス細工のように繊細で、あっという間に壊れてしまいそうだ。
四万十川友美。26歳。生まれは、堺市。ガラの悪さじゃ関西でも有数の街。そのなかでも圧倒的に荒っぽい一角、堺東商店街が子どもの頃の遊び場だった。
2ndアルバム『PENIS』が発売されると、インディーズ界にちょっとした“ざわめき”が起った。
歌とギターだけのフォークスタイルだが、これまでのフォークとはどこか色も匂いも肌合いも違う。なんとも言えぬ独特な「四万十川ワールド」としか表現のしようがない世界が展開されており、メジャーで活躍するミュージシャンの間でも一目置かれる存在になった。
「これまでバンドもやってきました。でも、ぼく、ややこしい性格なんで、続かないんですわ。最終的に、ぶち壊しちゃうんですよ」
いじめられっ子のくせに、人が好き。誰かを求めないではいられない。なのに、ややこしい性格が災いして、人は、離れていってしまう。そんな四万十川の人間への熱い想いが、一枚の、ナイーブで美しいアルバムに凝縮した。震えつつも伸びやかな高い声で、四万十川は歌う。
「射精したい。ぼくはもっと射精したい」(『夜には会えない太陽の民よ』)
「毎日悲しいことがたくさんあるけど、セックスできたら、ぼくはそれでいい」(『最近』)
『PENIS』。最初は奇を衒ったタイトルかと思ったが、違った。抑制の効いた、繊細な声で歌い上げられる四万十川ワールドは、実は、ひどく無骨で真っ直ぐなのだ。
四万十川友美。大阪出身のナイーブなチンピラ。ブレイクはおそらく近い。要注目である。
●四万blog:http://blog.livedoor.jp/babynanimokamo/
<取材・文/根本直樹 撮影/保阪駱駝>
「いっつも、いじめられてましたわ。ぼっこぼこですわ、毎日」
バリバリの河内弁で四万十川は語る。けっこうな“語り屋”だ。
「だって、わかってほしいんですもん。ぼくのことを。音楽やってるのも、ぼくのこと、知ってほしいから。わかってほしいから。みんなと仲良くなりたいから」
なかなかな“ウザさ”だ。
「ぼく、どこ行っても、嫌われるんですわ」
変な野郎だ。でも、その鋭くも澄んだ眼は、不思議なほど強い吸引力がある。このチンピラが生み出す音楽も然り。
「少年時代、忌野清志郎にやられて、ギターをはじめたのが最初です。清志郎の音楽性がどうのこうのじゃなく、清志郎そのものになろう、なれると思って、音楽をはじめたんですわ」
そんな四万十川の
『PENIS (ペニス)』 ひどく無骨で真っ直ぐな四万十川ワールド |
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