更新日:2015年10月21日 20:52
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授業で中絶写真を…過激な「中国の性教育」に賛否両論

性教育を学ぶ中国の児童たち

性教育を学ぶ中国の児童たち(本文とは関係ありません)

 習近平政権が格差是正の一環として教育改革を掲げるなか、中央政府による教育費支出が増大している。中国政府の発表によると、昨年の教育への公共支出は約45兆円。前年比で約10%増となり、GDPの4.3%に相当する規模だ。  そんななか、初等教育で改革が進められているのが、性教育。日本の学習指導要領に相当する、中国教育部の最新『小中学健康教育指導綱要』では、小学2年次までに「我々はどこから来たか」を、6年次までに「思春期における発育上の男女の違い」について理解させるよう求めている。  当局が性教育改革を急ぐ背景について、中国在住のフリーライター・吉井透氏はこう話す。 「上海市では今や市内の中学生の10~15%が『性体験アリ』だといいます。これに合わせ未成年の人工中絶や性病罹患率も増加している。中国では性教育は『生命安全教育』や『生理衛生教育』といった呼称で呼ばれていますが、その名の通り、健康管理の一環として教えられているんです」  教育現場では混乱も生じている。『新京報』(11月5日付)によると、北京市の小学校の2年生クラスで、人工中絶に関する新聞記事が教材として使用されたことが問題になったという。中絶器具に挟まれた状態の胎児を含む生々しい写真の数々のほか、愛人に関する記述もあり、児童らが心に深刻な傷を負ったとして保護者が抗議しているというのだ。  深セン市の公立小学校に娘を通わせる、自営業の村上健太郎さん(仮名・39歳)も、性教育に対する保護者の反発について語る。 「3年生に配られた性教育の教材に裸の男女の絵が描かれていたのですが、複数の保護者から『これはポルノではないか』という批判が続出した。私も確認したんですが、どう見てもネットで拾ってきたエロ画像だった(笑)。結局、学校側は急遽、男女の裸体にマジックで衣服を描き足すという対策をとったそうです。性教育を推進するわりに、現場ではまだこんな感覚なのです」  また、性教育を担当する職員からは、日本を責める声も上がっている。大連市在住の会社員・町田浩太さん(仮名・28歳)は話す。 「中学教師をやっている女友達は、日本のAVからの偏った知識が、性教育の妨げになっていると文句を言われました。性教育の時間に『男が女の顔に精液をかけるのは何のためですか?』という質問が男子生徒から投げかけられ、答えに窮したことがあるんだそう。こっちでは小学校高学年から、ネットで日本のAVをみんな見てますから、無理もないですが……」  一方、中国人の下半身事情に詳しい「歌舞伎町案内人」こと作家の李小牧氏は中国の性教育について別の問題を指摘する。 「中国では、女児を狙った性犯罪が2日に1件以上起きている。しかも犯人を捕まえると、常習犯だったというケースが多い。被害者となる女児に性の知識があまりにも乏しいゆえに、それが性的被害であることを認識できないことが大きな要因です。もっとはっきりと、『セックスが何たるか』をできるだけ早期から教える必要があると思います」  中国での性教育で必要なのは、「命の尊さよりもいかに自分を守るか」という点にあるようだ。 <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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