読売記者vs上杉隆 小沢会見場外バトルの舞台裏
10月20日、現在裁判中の小沢一郎元民主党代表が自由報道協会主催の記者会見に姿を現した――。
積極的な「対決姿勢」を鮮明に打ち出す“法廷戦略”に転換したからか、裁判が開かれなかったにも関わらず、初公判後の「ブチ切れ会見」からわずか2週間後の会見だった。
今回の自由報道協会主催の会見は、従来の記者会見のスタイルとは異なり、事前に一般国民からの質問を広く募る前半部と、通常の参加記者による質疑応答の後半部の二部制。「全国民参加型」のフルオープン会見をうたったものだった。
「震災の被災地について、お膝元の岩手県で小沢氏が表立った活動をした……という報道が聞こえてこないのは、なぜでしょうか?」
実際、会見の口火を切った1問目の質問は、自由報道協会に寄せられた一般の方からのもので、裁判の見通しや政局話とも違い、そもそも国民誰もが抱いていた素朴な問いかけだったといえよう。
ところが、会見が後半の質疑応答に移ると、なごやかな雰囲気さえ漂わせていた会見場が、一気に大荒れの展開となったのである。発端は読売新聞記者のこのひと言だった。
「陸山会事件の問題が起きてから、政治資金規正法違反に関して、汚職や脱税が伴わなければ実質的犯罪ではないという考えを再三述べてますが……」
小沢氏は即座にこの記者の言葉打ち消す。
「そんなことは言っておりません」(小沢氏)
「……ええと、そういうふうに受け取られることを言ってますが」(読売記者)
「そんなことありません」(小沢氏)
「……そういうふうに一貫して述べられていると思うんですが」(読売記者)
「違います!(苦笑)」(小沢氏)
「(失笑)」(場内)
あまりに露骨な決めつけを前提とした読売新聞記者の質問には、会見場から記者クラブ所属の記者、フリーランス記者を問わず失笑が漏れる。
この会見では、なるべく多くの記者の質問を受けつけるために質問は1人1問と前もって決められていた。ところが、この記者は質問に回答中の小沢氏の言葉を遮り、事実に基づかない“自説”を高らかに述べ始めたのだ。
「なるべく簡潔にお願いします」
司会が止めにはいるが、この読売新聞の記者は不規則発言をやめず、果ては「私も話しがしたいんです!」などと懇願する始末……。
「それはあたなの考えでしょ」
小沢氏も呆れ気味にこう話すにとどめ、司会の要請ででようやく記者の“質問”は終わった。ところが、騒動はこれで終わったわけではなかった。
会見終了後、主催である自由報道協会暫定代表であるジャーナリストの上杉隆と同協会会員の岩上安身氏が、読売新聞記者に迫ったのだ。
会見を生中継していたニコニコ生放送のカメラは、30分余りに及んだこのやりとりを漏らさず放送。読売新聞記者の言い分はこのようなものだった。
「通常の会見では、あのくらい許されてるじゃないですか」「質問もコミュニケーションじゃないですか?」
ツイッターのタイムライン上には「読売が荒らしにきた」「自由報道協会潰し」などとさまざまな憶測が流れたが、一方で上杉氏側に対しても、「上杉氏らの本心は、小沢に都合の悪い質問するな!だ」といった意見も出ており、一夜明けても騒ぎは収まらない状況だ。
渦中の上杉氏を直撃した。
「小沢さんが話しているのに言葉をかぶせたり、延々と質問を続けたり……私が言いたいのはルールを守れ!の一点だけ。今回の会見では、質問は1人1つ、そして自由報道協会主催の会見では司会の指示に従うのがルール。質問の内容なんて何を聞こうが自由だし、そのことで云々言っているのではない。ただ、会見の場は自説を述べるところじゃありません。どうしてもやりたいのなら、よそでやってほしいものです。読売新聞が会見を主催して小沢氏を呼べばいい。いやぁ、ホント、(僕は冷静だったんだけど)岩上さんが怒っちゃってねぇ(笑)、代表としてあとでよく注意しときます」
会見に参加していた筆者としては、件の読売記者の「小沢叩き」ありきの質問に対して“違和感”を覚えざるを得なかったが……。
いずれにせよ小沢裁判報道は、判決の出る来年4月に向け、メディアの場内・場外乱闘も含め、まだまだ盛り上がりを見せそうな気配だ。
取材・文・撮影/ソラマメタロウ
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