“問題ツイート”で失職危機の女性市議を直撃!
「放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」
この挑発的な“問題ツイート”をきっかけにネット上で物議を醸した群馬県桐生市の庭山由紀市議(無所属・1期)をめぐって、桐生市議会は15日、議員の除名を求める懲罰動議の提案を提出。庭山議員からの弁明の申し出がなかったため、6月20日にも議会から除名され、失職する見通しとなった。
そもそもの発端となったこのツイートは5月25日につぶやかれたもので、ツイッター上ではすかさず批判が殺到。庭山市議のツイッターやブログも炎上し、市議会事務局には抗議や苦情が全国から多数寄せられたというが、当の市議はこの批判の声に対し「うるさい」「指図は受けない」などといったツイートで応酬。泥仕合の様相を呈していた。
ここ数年、現職の地方議員や首長らがネット上で「不適切」な発言をしたことで炎上するケースが増えており、’10年にリコールで失職した竹原信一元阿久根市長の一連の騒動も記憶に古くない。だが、議員個人のネット上の発言が原因で、即バッジを外さなければならない事態になるものなのか? 現在、失職の危機にある庭山市議を直撃してみた。
「あの問題と言われてるツイートをした2日前、私はある父母の話を聞いていたんです。彼らは原発事故以降、子供だけには被曝させたくないと、空間線量や食べ物にも細心の注意を払ってきました。ところが1年後、子供に甲状腺の異常が見つかった……。あまり知られていませんが、群馬県は福島県に次いで放射能に汚染されており、その意味ではここも“被災地”なのです。にもかかわらず、現実に向き合いたくないのでしょう。3・11前と同じ生活を送る人たちのどれほど多いことか。考え方は人それぞれですし、私の意見を強制するつもりはありません。しかし、『地産地消』『食べて被災地を応援』などと聞こえのいい言葉で、汚染を拡散しているのは見過ごせなかった。大人なら選別もできますが、学校給食に汚染された食材を使われたら、子供たちはどうすればいいのか。実際、すでに地域ではセシウムが検出された人も出ています。そんなことを考えながら市役所に行くと、献血車が止まっているのが目に飛び込んできたんです。直感的に『大丈夫なの?』って思って、それをツイートしただけのことです」
日本赤十字は献血する人の“資格”を厳重に定めている。特定の既往症や海外渡航歴、半年以内にピアスやタトゥーを入れた提供者も“NG”だ。昨年4月1日付の通達で、福島第一、第二原発の作業員で累積被曝量が100ミリシーベルトを超えている者も、6か月間献血できないことになった。ところが一般人の放射線被曝については、低レベルだから問題はないという判断なのだろう、何の取り決めもないのが現状だ。冒頭のツイート当日にネット上で浴びせられた批判について庭山市議に聞くと、
「後で知ったのですが、ツイッターのフォロワーが2000から8000に、ブログも1日2000人くらいだった来訪者がなんと23万人に増えていたんです! 何事かと思いましたよ。あの日は翌日に岩手県宮古市の瓦礫が桐生市に運び込まれるので、抗議のプラカードを作るのに大忙し。ネットを見てる暇なんてなかった(笑)。今、ツイッターで批判をブロックしているのも、構ってる暇がないから。桐生市議会には居眠りする議員も少なくありませんが、議員の活動ってちゃんとやるとかなり忙しいんですよ。ただ、他の議員は、私に批判をブツける絶好のチャンス到来って思ったみたい(笑)。私、桐生市議会で長年公費の私的流用を徹底的に調べているんで、大分うるさがられてるんです。実際、政務調査費で趣味の本や電気製品を買う議員もいるし、なかには大学院に通った人までいるくらい。公費を“小遣い”くらいにしか考えてないんですよ」
当初は批判一色だったネット上も、庭山市議の「失職」が現実味を帯びてくると、擁護する意見も目立ち始めた。議会が失職の根拠とする地方自治法132条は、「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の 私生活にわたる言論をしてはならない」と定めている。庭山市議が、議員として品位に欠ける「暴言」を吐いたのは否定できないが、発言の場は「議会」ではなく、あくまで「ネット」上だ。桐生市議会の庭山排除の論理は、法的にかなり強引にも映るが、現在、庭山市議は迫る失職をどう受け止めているのか。
「特に何も……。議会側についてる弁護士先生の専門が、債権関係らしい(苦笑)。桐生市議会では、こういうトンチンカンなことは日常茶飯事ですが。今回の懲罰動議が地方自治の精神に反するか……というより、桐生市議会はそもそも自治を目指してないし、議員は高額の報酬や政務調査費という“お小遣い”をもらいたいだけですから。まぁ、多くの議員は、私がいなくなってハッピーな議員ライフを送れる!って、大喜びでしょうね。ただ、今回の一件で問題にすべきは、放射能という現実と向き合ったうえで、食料品や瓦礫をどう管理すべきかということだったはず。なのに、私が問題だという議会の考え方は、今も受け入れられません」
ある意味、エキセントリックにも映る庭山市議の発言は物議を醸しやすいのだろう。ただ、地方議会が抱える問題もこの騒動の背景に横たわっているのも事実なのかもしれない。 <取材・文/ソラマメタロウ>
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