少林寺までもが“チェーン展開”。中国に画一化の波が進む理由
カンフー映画ファンなら一度は訪れたい少林寺が、近くコンビニよりもお手軽になるかもしれない。『南方都市報』(1月28日付)によると、河南省鄭州市に本部がある少林寺が“チェーン展開”を進めているのだ。ビジネスモデルはまず、全国の廃寺状態の寺院を次々に買収し、少林寺ブランドの寺として再生するというもの。同寺は、すでに約400億円もの資金を投じ、全国で30以上の寺を再生してチェーン化したという。
中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
映画のイメージ丸つぶれのなんとも俗っぽい宗教ビジネスだが、中国では最近、あらゆる産業で大資本化が進んでいるのだ。
中国チェーン経営協会によると、飲食・小売りなど中国トップ100チェーンの’13年の売上平均額は前年比で9.9%、店舗数も7.6%増加しているという。
一方で、零細ビジネスは淘汰の一途をたどっている。北京市在住の日本車メーカー勤務・内田義隆さん(仮名・44歳)も話す。
「北京でも、かろうじて下町の風情が残るエリアでは家族経営の老舗食堂はここ数年でほぼなくなった。その代わりにできたのは、全国チェーンの飲食店。店舗の賃料から原材料費、人件費が軒並み上昇するなか、小規模ビジネスは苦しい。また、外食不信が広がり『名前を知る店のほうが信用できる』という風潮もあって、独立系店舗は不利になる一方です」
さらに中国では、食堂でも商店でもひとたび成功すると、店主はすぐに企業にノウハウを売ってしまって自分は違う商売を始めるケースが多く、チェーン化に拍車をかけている。
広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)も、フラット化する中国を嘆く。
「かつて省や市を跨げば、飲食店に置いてあるビールの銘柄が替わり、外食する際はその土地の地ビールを飲むのが楽しみのひとつだった。でも最近は内陸部の田舎だと青島ビールしか置いていないことがほとんど。5年ほど前から青島ビールは内陸部での販売攻勢を強め、地ビールを駆逐していった。田舎の飲食店でも青島ビールのロゴが入ったユニフォーム姿の若い女のコがテーブルを回って営業するのをよく見かけます」
一方、重慶市在住の自営業・砂川孝昌さん(仮名・49歳)は、各都市も画一化しつつあると話す。
「ここ数年で発展した内陸部の中級都市は、初訪問の街でも駅に降り立ったときの印象はどこも似たり寄ったり。駅周辺の歩道のタイルや駅ビルの壁の色・材質がまるで同じなんです。5年くらい前までに開発を終えた街はそれぞれバラバラなんですが。資材メーカーも零細が淘汰され、大資本に束ねられた結果かもしれません」
しかし、こうした零細企業の淘汰は、当局の意向に沿ったものだという。中国在住のジャーナリスト、吉井透氏は話す。
「今まで、企業でも飲食店でも玉石混交で有象無象の会社が多すぎた。工場の公害でも食堂の異物混入でも、小さな火種が政権批判になりかねない昨今、当局は管理強化したいというのが真の狙い。また、経済低迷のなか、業界再編によって粒よりの企業を育てることに集中し、国内産業の発展強化に繋げたいという思惑もある」
せっかく広大な中国も、どこに行っても同じでは味気ない限りだ。 <取材・文/奥窪優木>
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