中国で“転職する美女”が続出。政府の「コンパニオン規制」の影響で
「失業してしまい、食べるのにも困ってます!」
4月26日、悲痛な叫びを掲げた若い女性たちのグループが上海の路上に現れた。物乞いは珍しくない中国だが、よく見ると美女揃い。実はこれ、モーターショーのコンパニオンたちによるデモ活動だったのだ。
近年、各地のモーターショーでは半裸同然が当たり前で、露出合戦が激化していたが、風紀引き締めに乗り出す当局が問題視。今年4月に開催された上海モーターショーでは、ついにコンパニオンの出演が事実上、禁止されたのだ。
中国在住のフリーライター・吉井透氏によると、こうした動きは他業界にも及んでいるという。
「習近平政権による反腐敗運動以降、スポーツやゲーム、コスプレなど地方政府が管轄するような大型イベントでは軒並み『お色気禁止令』が出されています。おまんま食い上げになったコンパニオンや、彼女たちを束ねるエージェントは、新たな活躍の場を探すことに躍起になっています」
そんな彼らの“新境地”の一つが不動産業界だ。山東省日照市で行われた、分譲マンションの販売説明会では、上半身裸の美女軍団が出演。背中にボディペイントされた間取りを描くなどして、物件をアピールした(『国際在線』4月27日付)。重慶市在住の自営業・砂川孝昌さん(仮名・49歳)も美女コンパニオンが投入された意外な現場を目にした。
「繁華街で、ピチピチのシャツを来た美女がランニングマシンに乗って巨乳を揺らしていた。見とれていると、別の女性が保険商品のパンフレットを配り始めた。見境のない手口に呆れると同時に、つられてしまった自分が不甲斐なかったです(笑)」
さらにお色気には相応しくない場所にも進出している。『新華網』(4月23日付)によると、農村部で行われる葬儀の席で、コンパニオンによるストリップやダンスなどの見せ物を催すことを当局が禁止したという。「参列者が多いほど成仏できる」という迷信に従い、喪主がお色気で客寄せする風習が近年、続いていた。だが当局は「堕落的」として規制に乗り出したのだ。
さまざまな分野に広がるコンパニオン締め出し令のなか、まったく美貌を売りにしない職業に鞍替えする者も少なくない。広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)は話す。
「広州モーターショーにも出演していた知り合いのコンパニオンは、最近、携帯電話売りに転職しました。彼女も含め、コンパニオンの多くはキャバ嬢と二足のわらじを履いていたんですが、キャバクラも風俗取り締まりで壊滅状態。仕方なくルックスを問わない職業に転職しています。その影響なのか、コンビニや飲食店の従業員など、街中の美女率が高まってます」
「美女余り現象」をも巻き起こしている当局によるコンパニオン締め出しについて、ジャーナリストの周来友氏はこう評価する。
「これまで中国では、コンパニオンなど美女は富裕層の“所有物”でした。しかし、ルックスだけでお金が得られるような職種が減れば、美人とそうでもない女性の経済格差は是正され、また、庶民の男にも美人をゲットできるチャンスが広がりますよ」
美人・不美人の格差是正から、社会の公平化が始まる!?
<取材・文/奥窪優木 写真/ドラゴンガジェット編集部>
週刊SPA!連載 【中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
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