POPブームの仕掛け人に聞く「キャッチコピーの作り方」
書店で必ず見かける販促ツール「POP」。気の利いた手書きのフレーズで今や本の売れ行きも左右するアイテムだが、アレはいったいどのように考えているのだろうか。“POP王”の異名を取る三省堂書店の内田剛氏に聞いた。
「基本的に“面白い本だからみんなに読んでもらいたい”という思いを書く。それに尽きますね。ですから、特に決まったセオリーがあるわけではないんです」
ただ、町中の書店でPOPを見れば、「涙腺崩壊」「抱腹絶倒」「大どんでん返しの結末」などお決まりの文句が並んでいるが……。
「最近のお客さまは買う前に泣ける本なのか笑える本なのか“結論”を求めている傾向があります。そのため、結論が一目でわかる定型のフレーズが多用されるのでしょう。特にお客さまの滞在時間が短くなる駅ビルの書店などでは、わかりやすいフレーズがどうしても多くなるのだと思います」
わずかな時間で効率よく本を探す人たちのために、内容をシンプルに伝えられる定型フレーズが用いられているのだ。ただ、内田氏は、定型フレーズをできる限り避けるようにしているという。
「三省堂書店神保町本店は本が大好きなお客さまがよく来られます。なので、『涙腺崩壊!』などとやるとかえって逆効果。泣けるかどうかは読む人次第ですから。私の場合は本の中から“殺し文句”になるフレーズを抜き出してPOPを作ることが多いですね」
本を象徴する言葉や心に刺さる一言で“読む価値がありそう”と思ってもらうというわけだ。
「ただ、それはあくまでも僕のやり方。印象的なワンフレーズで勝負する人もいれば、イラストを使う人もいる。結局、POP作りは書店員のセンスです。ヴィレッジヴァンガードはワンフレーズ勝負のPOPを多用していますよね。値段を大きく書いてそれをPOPにするとか……あれこそセンスの塊。とてもマネできません(笑)」
小さな一枚のPOPには、その本の魅力と書店員のセンスがぎっしり詰まっているのだ。
【内田剛氏】
三省堂書店営業本部勤務。約25年の書店員歴で、“毎日1枚”をポリシーに数千枚ものPOPを書いてきた。“POP王”の異名も持つPOPブームの仕掛け人
― あの[煽り文句]の真実を明かします ―
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