“呪殺”を掲げる『JKS47』を直撃! 「乃木坂46とAKB48があるのに『47』がなかったから」
8月27日午後3時。経済産業省本館横「脱原発経産省前テントひろば」。脱原発運動の中心地は、いつにない異様な空気が漂っていた。
そこで行われていたのは、「呪殺祈祷僧團四十七士(JKS47)」による呪殺祈祷会「死者が裁く」。「呪殺」「死者が裁く」と大書された黒幟旗が掲げられ、「呪殺祈祷僧團」と記された「たすき」を肩に負う僧侶と数十名の賛同者が集う。
1970年、社会問題になっていた公害を引き起こした企業経営者たちを密教、密教の呪術で地獄に連行するという活動をしていた「公害企業主呪殺祈祷僧団」の再結成式だという。
「世尊妙相具(せ~そんみょ~そうぐ~)」。
やがて、黒い法衣を身にまとった7人の読経が始まる。本格的な法要の体だが、それはさほどおどろおどろしくなく、「街頭劇」のような印象。それもそのはず、「JKS47」の仕掛け人は、劇作家にして、僧侶の上杉清文氏。
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1970~1980年代にアングラ劇団「発見の会」、同じく「天象儀館」で活躍して、サブカルシーンで名を馳せた。日蓮宗成就山本國寺住職にして劇作家、思想家。再結成式でも盟友、法華宗本門流法昌寺住職、絶叫歌人で知られる福島泰樹氏が表白文を詠み上げ、作家の末井昭氏がサックスを吹いた。
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この「呪殺祈祷僧團」再結成の理由は原発再稼働、安保法制への反対だという。だが、「JKS47」というネーミング。「呪殺」という言葉へのイメージからか、この法要を実際には見ていないネットではかなりの反感を買っている。毀誉褒貶、いや、「毀」「貶」が圧倒的。「呪殺」=「人を呪い殺すこと」は、宗教的、仏教的でないなど……批判が集まっている。
だが、上杉氏は言う。
「そうらしいけど、ネットはあまり見てないんだよね」
「呪殺」プロジェクトの首謀者との受け答えは続く。
――「JKS47」というネーミングも反感を買っているようです。
「『JKS47』は『赤穂浪士四七士』からなんですが、『乃木坂46』と『AKB48』があるのに、なぜ『47』がない。その隙間を埋めて、共闘して『JKS47』が成立するのではないかなと(笑)。仲間は同意してくれないけど、“遊びの精神”があったほうがいいとボクは思うんです」
――「呪殺」というと、荒俣宏の小説『帝都物語』の加持祈祷による連合国首脳の呪殺やら、日蓮聖人の蒙古撃退の呪術など彷彿させますが?
「『呪殺』は辞書にはないんですよ。忌避された言葉なんだけど、『呪』と『殺』だったら、別々には記載があるけど、ボクがやりたいことは他人を『呪』い、『殺』すことではないんですよ。
『殺』が『人が他人を殺す』、『殺人』という意味にとらえるのは、人間中心主義、近代主義だとボクは思う。『殺』の語源は『呪霊をもつ獣を撃って己に向けられた呪詛を祓う』こと。
白川静さんの受け売りだけど、それが儒教の影響もあって、主に人殺しを意味するようになった。ボクは特定の誰かを殺したい思いでこういう活動を始めたわけでないんです。きっかけは、福島第一原発事故で、放射能を呪殺したいという」
――「誰かを呪い殺す」という、個別な禍々しい思いはないんですね。
「もちろんです。ただ、『呪殺』という言葉はすごいインパクトがある。なので、ネットではいろいろ言われてるみたいですけどね。『経産省前で木っ端役人を呪い殺してどうするんだ』『東電に行け』みたいなね。しかし、ボクらはオープンにやっているので、『呪い殺す』つもりなんてあまりないですよ。そういうことは、内緒でやらなければならないこと(笑)。
密教には『呪い殺す』儀式もないわけではないけど、公開でやるなんてありえません。ボクらは何かができる力を持った人間ではないので、ひたすらお願いしますって拝んでいるだけなんです」
――では、なぜ「呪殺」なんでしょうか?
「45年前の公害企業主呪殺祈祷僧団は公害企業の経営者を呪殺するとしていたけれど、本願は福島泰樹さんが表白文で詠い上げていたように、文明で殺された死者から言葉を代弁することにあった。死者の裁き、その叫び声を聞いて、原発再稼働、安保法制に反対するという」
――今後、どのような行動をされていくつもりですか?
「末井昭さんのように在家でもいいんですけれど、いずれ四七人の僧団にしたいとは思っています。今日は『神7』ならぬ『仏7』みたいなもの。そんなことを言っているのは、ボクなんですけれどね(笑)。それに、近いうちに川内原子力発電所には行きたい。ただ、普通の反原発運動の人たちは「呪殺」と黒旗をなびかせて練り歩くボクらとは、連動してくれないかもしれないけれどね」
飄々たる語り口、風貌の上杉氏。なぜいま「呪殺」なのかが、なんとなくわかる気がする。JKS47はアングラだけど、オカルトではない。
〈取材・文・撮影/羽柴重文〉
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