更新日:2015年10月19日 21:23
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明治時代の外国人がみた「日本女性」の評判がスゴい

石川真理子氏

『女子の教養 (武士の娘だった祖母が教えてくれた) 』(致知出版社)の著者、石川真理子氏。厳格な武家の娘として育ったという、明治生まれの祖母から学んだ武士道の教訓をしたためた前著『女子の武士道』(同)も話題となった 撮影/日刊SPA!

 一昨年、日本中を歓喜させた2020年・東京五輪開催決定の“狂騒”から早2年――。  新国立競技場の建設計画や公式エンブレムを巡る問題は今なおすったもんだが続いているが、あの大混戦の招致レースを勝ち抜けたのも、日本の魅力を世界に向けてストレートにアピールできたからに他ならない。その後、日本ブームの起爆剤となったのは言うまでもなく、「お・も・て・な・し」の一語が合言葉のように巷を飛び交い、今も国内外を問わず、日本古来の伝統・文化への関心が日増しに高まりを見せている。その原初とも言うべき“武士道の精神”が、ここにきて再び脚光を浴びているのだ。  元来、武士道とは「武士階級の倫理・道徳規範」を体系化した思想と定義されていることから、一般に“男子の専売特許”のように思われがちだが、昨年9月に出版された『女子の武士道』(致知出版社)では、そのタイトルからもわかるように、女性が生きる上での規範となる武士道の教えを明解に著わし、ビッグセールスを記録。武士道が「日本固有の常識的な考え方」であり、男女の区別なくすべての日本人に根付いた思想であることを世に広く知らしめた一冊として、武士道人気に一役買ったことは言うまでもない。先月、その姉妹編とも言うべき待望の最新刊『女子の教養(たしなみ)』が上梓されたのだが、これが前作に続き再び話題を呼んでいる。 「前著では、“明治女”である私の祖母から聞いた『55の言葉』をベースに、武士道の本質や道徳観念などについて記しましたが、本著では祖母の流儀の中でも特に大切だと思えること、普段から私自身が心掛けていることを中心にまとめました。日常生活での何気ない挙措や言葉遣い、表情や目線など、より具体的な内容になっていますので、その意味では、前著の“実践編”と呼べる一冊に仕上がっています」  こう話すのは、本書の著者である石川真理子さん。元米沢藩士の娘である祖母のもと、厳格な躾を受けて育ったという石川さんの物書きとしての姿勢は、あくまで「作品の主人公は読者の皆様」であり、「自分の想いを書き記すことは極力控える」ことだというが、戦後70年という大きな節目を迎えた今年、どうしても本書内で伝えたい“想い”があったという。 「それは、この70年間で現代人が失ってしまった一番の根っこの部分、つまり“先祖との繋がり”について、もう一度深く思いを巡らして頂きたいということです。敗戦による戦禍から奇跡の復興を遂げ、世界でも有数の経済大国へと成長したことそれ自体は確かに素晴らしいことですが、それに反比例するように日本人としてのアイデンティティが薄れていって、まるで“根無し草”のような感覚を持った人が増えていると感じます。結果、先祖から連綿と続く命の楔の先端に自分が存在することに無自覚なことはもちろん、生きている意味や人生において何を為すべきかということに思いが至らないわけで、どうしても生き方が無責任にならざるを得ない。元来、日本人は八百万の神を信じ、万物に宿る神々を支えに生きてきました。それは、人生における数多の苦しみを少しでも軽減し、人生をより豊かなものにするための“確かな方法のひとつ”として実践されてきたものではないでしょうか。今こそ、先祖との絆を再認識することで日本人としての誇りを取り戻して頂きたいと強く願うし、本書がその一助となればこんなに嬉しいことはありません」  そもそも、『武士道』についての本を書き始めた契機は、「強く生きていくにはどうしたらいいのかという、私自身の“悩み”があったから」だと石川さんは話すが、それは同氏が20~30代の頃に経験した「結婚をして母として、そして妻として生きるなかで直面するさまざまな難局を、どのように切り抜けるべきか、その対処法を見出すことができなかった」ことに起因すると続ける。 「女性が生きる上での“真の勝負の始まり”は結婚してからだと思うのですが、家事や育児、仕事との両立など、結婚をすると本当に大変なことが多い。そんな多忙な日々を送るなかで、ふと『祖母の強さの根本とは一体何なのか』ということに改めて思い至り、祖母を知る親族などに話を聞き始めたんです。それが次第に明治女性全般についての興味に繋がり、文献を漁って調べたりしていたのですが、それはあくまで自分自身のための学びでした。一冊の本にまとめようと思ったのは、仕事を通じて出会う女性たちの心中に、私が抱える悩みや葛藤と同じものを見出したためです。一見すると強い女性のようでありながら、その強さの正体が実は鎧や甲冑をまとった強さであり、つまりは本来の自分というものを世間から覆い隠すことで日々を生き抜いているのではないかと気づきました。私自身、祖母をはじめとした明治女性の教えに救われましたし、今後も学び続ける日々ですが、その“武士道精神”はきっと世のすべての女性の助けになるという強い確信を持っています」  女性読者の中でも、とりわけ「今までに一度も武士道などについて考えたことがなかった方」に読んで頂きたいと話す石川さん。そこには、現代女性の多くが“日本人本来の美しさ”に気づくことが出来ず、白人至上主義とも言うべき趨勢にあるからだという。 「本書内では、明治時代に外国人の手によって書かれた文献から、多くの文章を引用しているのですが、その内容のほとんどが『日本の女性は素晴らしい!』という、手放しでの大絶賛ばかりで、“世界一の女性”と評する外国人も少なくありません。戦後、経済成長に伴う生活様式の西洋化に伴い、白人の文化や美の基準に我々日本人も同調し始めたことは周知のことですが、残念ながらその傾向は未だに加速していて、若い女の子の大半が様々な手段で西洋人的な外見を獲得しようと四苦八苦しています。ですが、それはどこまでいっても“西洋人の価値基準”であり、真似をする必要など本当はないんです。我々には他に類を見ないほどに独創的で豊かな2000年以上にも渡る歴史と文化があるのですから。その原点に立ち返り、日本人である我々こそがそれを『真の基準』として取り戻す必要があるということを強く訴えたい。そこがクリアできさえすれば、若い女の子も「美しい日本女性」というものを価値基準として、自信を持つことができると思うんです。ですので、是非とも武士道をはじめとした日本の歴史や伝統全般に関心がなかった方、そしてこれからの日本の未来を担う若い方々に特に読んで頂きたいし、心から『日本人でよかった!』と感じて頂けたら、もうそれだけで著者冥利に尽きます」  5年後開催の東京オリンピックに関しても、「正直、言いたいことは山ほどあるが、新国立競技場やエンブレムの問題しかり、日本を世界にアピールしようとする覚悟も気構えも感じられない」と話すなど、終始穏やかなその物腰の奥底からは“日本人としての強い気概”がひしひしと感じられる。「おもてなし」の一語がただの“流行語”に堕することのないよう、我々すべての日本人がその本当の意味と心意気を学び直すべきときが、今こそ訪れているのかもしれない。 ◆著者略歴 石川真理子。昭和41年東京都生まれ。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業後、編集プロダクションを経てライターとして活躍。著書に『女子の教養(たしなみ)』(到知出版社/1400円+税)、『女子の武士道』(致知出版社)『いまも生きる「武士道」』(講談社+a新書)『新島八重 武家の女はまつげを濡らさない』など <取材・文/日刊SPA!取材班>
女子の教養(たしなみ)

武士の娘だった祖母が教えてくれた

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