ソー活元年 企業側の本音とは?
―[ソー活で加速する残念な就職格差]―
2011年はソー活元年。そんなかけ声がメディアやネットを騒がしている。ソー活とは、facebookやTwitterを中心とした“ソー”シャルメディアを活用し、“双”方向で行なう就職(採用)活動のこと。学生の就職難と企業側の採用難を背景に、双方のミスマッチ解消のために広がりを見せているという。
実際採用する企業側は、ソー活についてどのように考えているのか。
「今年は日本経団連の倫理憲章によって採用広報活動の時期が遅くなりました。12月までは特定の学生に対しての活動はNG。ですが、HPやSNSなどは多数の学生に向けてオープンに自社情報を発信する場なので問題ありません。弊社でも採用facebookページを今夏からオープンしました。学生は『いいね!』は押してくれるのですが、コメントはありません。12月に本格開始なので、今は様子を見ています」と、リクルートHRマーケティングで新卒採用を担当する江口氏は語る。
各社まだ手探り状態であるようだ。そんななか、企業向けにSNSの採用支援を行う会社も登場している。弱冠23歳の春日博文氏が今年、起業したばかりのソーシャルリクルーティングだ。
「大企業がその認知度だけで、優秀な学生を採用できる時代は終わりつつあります。反面、企業はSNSというメディアを持つことで発信しやすくなった。同時にSNSでは、面接前に個人の興味や関心がわかるので、マッチングを悩む企業にとってもメリットはある」(春日氏)
ソー活が普及すれば、企業が欲する多種多様な人材を採用できるようになるという。しかし、企業にはメリットばかりではない。
「中小企業ではなかなかfacebookを更新するリソースを割けません。『どこまで書いていいのか』なんて、マニュアルを作るのも大変ですし、根付かないかも」
と話すのは中規模メーカーで人事を担当する佐藤敦氏(仮名)。
「現状、ナビサイトや自社で採用HPを持っているところも多い。それとは別に毎日更新コンテンツを考えるのは大変です」(佐藤氏)
ITベンチャーであるシナジーマーケティングの北川雄士氏もSNSの運用の大変さを語る。
「弊社でも採用facebookページを作ったのですが、今は私一人で運用しています。忙しくて3か月ほど更新が止まった状態です」
等身大のコンテンツを提供しようとは思いつつも、コンプライアンスを考えると数人でチームを組んで運用するのが関の山だという。
「結局のところ、企業を知るためのツールが増えただけ。すなわちインフラの1つに過ぎないのでは。SNSを介せば、その会社の人に会いやすいですが、あくまで手段の一つ。ソー活の延長で企業訪問に来ても、それだけで内定は出しません。マッチングが大事ですから」(北川氏)
企業側も学生同様手探りな様子。こんなんで果たして本当に根付くのだろうか。今後を見守りたい。
― ソー活で加速する残念な就職格差【6】 -
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