歴史博物館は、歴史の面白さを伝えられるか(3)――千葉県佐倉市に「国立」の歴博があった!
歴博は事業規模に対して、入場料収入があまりに少な過ぎる
次に、予算面から見てみよう。 歴博は、他の国立大学と同様に平成16(2004)年度以降、国の行政組織の一部から独立した法人格が付与された。 その意味するところは、自立的に運営する権限が与えられた一方、「運営費交付金」、つまり国からの補助金(税金)が交付されるが、できるだけ自己収入や外部資金を獲得しなさいということだ。 平成16年度~平成23年度までの運営費交付金を見ると、実に16億円から17億円の範囲で推移している。 一方、自己収入の大きな柱である入場料収入を見ると、同じ期間で、1年度当たり平均して5000万円ほどに過ぎない(前掲の三十年史、36~37ページより)。 入場料収入の運営費交付金に対する割合は、わずかに3%である。つまり歴博は、事業規模に対して入場料収入が少な過ぎるのである。口コミで広がらない歴博の存在
では、なぜ入場料収入が少ないのか? 関係者には申し訳ないが、はっきり言えば展示内容が面白くないため、口コミで歴博の存在が広がらず、リピーターも少ないことに起因しているように思える。 筆者は、平成20(2008)年の初春と、8年半ぶりの今年の初秋の二度、この歴博を見学したが、前述した広島・新潟の両県立歴史博物館を見学したときのような「日本の歴史ってこんなに面白いのか」という感動がわいてこなかった。 この種の博物館は、不定期に開催される企画展より常設展示が大事になる。歴博では、この常設展示を総合展示と呼び、日本の古代から現代にいたる歴史を6つの展示室に分け、それぞれの時代のテーマのいくつかをクローズアップさせた展示方式をとっている。 その展示方法は、それはそれでよいのだが、一言でいえば、展示内容が平板でメリハリがなく、歴史用語集の解説を読んでいる気分になってくる。 もちろん国立の施設で膨大なお金をつぎ込んでいるだけあって、例えば越前(福井県)の戦国大名の「一乗谷朝倉氏本館」など、精緻に縮尺復元されている模型が多く見られるのだが、「それで何なの?」で終わってしまっている。 前述したように広島県立歴史博物館では、「幻の町・草戸千軒」を「実物大」で再現しているため、自分がそこにタイムスリップした感覚が味わえる。 再現されている草戸千軒の市場では、タイや干しアワビ、大豆や山芋などが売られている様子や、当時の鍛冶屋、下駄屋などの店内の様子や道具類も実物大で見ることができる。 そのため当時の市場の様子や人々の暮らしぶりが実感でき、さらに、当時の街並みを60分の1のスケールの模型で再現しているため、全体像の把握にも役立つ。(続く) (文責=育鵬社編集部M)ハッシュタグ
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