歴史博物館は、歴史の面白さを伝えられるか(4)――ぴんと来ない歴博の展示内容

大鋸(おが)引きの様子は、葛飾北斎『富嶽三十六景』の「遠江山中」でも描かれている

 

疑問が多い展示内容


 歴博でも実物大やそれに類似する再現展示はもちろん行われており、例えば職人二人が大きなノコギリで大きな木をたてに切る「大鋸(おが)引き」が展示されている。

 その解説には「室町時代になると大鋸とよばれる縦引鋸(のこぎり)が中国から導入され、初めて製材が可能になり、建築界に一大革新をもたらしました」(同館ホームページより)とある。

 しかし、飛鳥時代の法隆寺(奈良県斑鳩町)や天平時代の東大寺(奈良県奈良市)を見るまでもなく、日本の建築技術は古代より創意工夫しながら丸太を成形してきており、「大鋸引き」を実物大で再現展示するほどの価値があるものかという疑問がわく。

 また、「初めて製材が可能になり」と解説されているが、それまでの建築技術に関する説明が乏しいため、法隆寺や東大寺の建築技術は一体何だったのかという疑問もわく。

 この一例だけでなく、歴博は何を実物大として、また何を縮尺再現模型にするかというバランスが悪い気がする。

 広島、新潟の両県立博物館がなぜ「幻の町・草戸千軒」と「縄文の四季」の実物大の再現展示を行ったのか、その意気込みと展示技術を学んでほしい。

もっと良くなるはずの歴博の展示


 また、縮尺再現模型に関しては、「東武ワールドスクウェア」(栃木県日光市)が参考になるだろう。

 ここでは、日本のみならず世界の文化遺産が展示されている。

 日本に関して言えば、先ほどの法隆寺や東大寺大仏殿はもとより、平等院鳳凰堂や姫路城、さらには、東京スカイツリーまである壮大なミニチュアパークである。

 歴博も、原始・古代、中世、近世、近代、現代の各展示室の冒頭コーナーで、その時代の代表的な歴史的建造物を縮尺再現し、的確な解説を加えたらよいのではないか。

 例えば、古代の代表的な建造物である法隆寺五重塔の心柱(しんばしら)の技術が、現代を代表する建造物である東京スカイツリーに応用されているという解説があれば、「歴史の連続性」を感じられるのではないか。

 あるいは、7世紀に創建された法隆寺と、ほぼ同時期から始まった伊勢神宮(三重県伊勢市)の式年遷宮の建築思想の比較解説をしてみたら面白い。

 前者は地震などに耐え1300年以上同じ姿が保たれるように設計され、後者は、20年に一度行われる式年遷宮行事が1300年以上続いており、これは建物の様式がすべて同じになるよう、技術の継承に重点を置いた発想である。

 同じ7世紀に、前者は建造物そのものの永続性を求め、後者は技術継承の永続性を求めた二つの建築思想があったことは、日本文化の幅広さを示している。

 こうした展示なり解説があれば、歴博に社会見学に来ている児童・生徒のみならず、一般の入場者にも、歴史の面白さを感じてもらえると思うのだが……。(この連載、後日に続く)

(文責=育鵬社編集部M)




関連記事