自分の国を「いい国だ」と言う人は“右翼”なのか

前回の東京五輪、訪日外国人数は何人だったか?

<文/佐藤芳直 連載第12回>

訪日外国人観光客の推移(日本政府観光局資料より)


 観光庁は、平成28(2016)年の訪日外国人数が過去最高の2400万人前後に達するとの見通しを示している。訪日客数は平成25年に初めて1000万人を超えたが、今年は10月までに2011万3000人と、初めて2000万人を突破し、3年足らずでほぼ2倍になった。私は、数年前から恐らく2020年は3000万人になるだろうと言っていたが、政府も当初、2020年までに年間2000万人を目標としてきたが、これがほぼ達成できたことから、2020年の目標を3000万人に引き上げた。

 ところで、前回の東京オリンピックは昭和39(1964)年だが、その頃の訪日外国人はどれくらいだったかご存じだろうか? あの頃は、世界から日本に外国人がたくさん来たと、ニュースでも報道されていた。日本人も英語を話せるようにならなければいけないと言われていた。だが、昭和39年の海外からの観光客数は、わずか35万人だったのである。

 その6年後、『世界の国からこんにちは』というのがあった。昭和45(1970)年の日本万国博覧会(大阪万博)である。三波春夫さんらが「♪こんにちは、こんにちは」と歌っていた。この年で85万人である。

 訪日外国人が100万人を突破するのは昭和53(1978)年で、300万人の大台に乗って大騒ぎしたのが平成2(1990)年、バブルの真っ最中だった。翌年にバブルがはじけて、「失われた20年」に突入したが、その間も訪日外国人数はずっと増え続け、東日本大震災があった前年の平成22(2010)年には860万人まで増加した。

 しかし、平成23年3月11日に東日本大震災が起こった。この年の訪日客は、さすがに200万人以上減少した。海外では日本だと流さないような凄惨な映像も放映されており、また、原発事故による放射能汚染を恐れ、多くの外国人が訪日を控えた。当然のことだったであろう。

 東日本大震災の翌年はどうなったか。国内では事故の調査が続き、首都官邸前では反原発デモなどが行われていた。にもかかわらず、わずか1年で訪日外国人は800万人台にV字回復した。世界は、「日本はあれほどの原発事故があっても安全なんだ」と思った。だから、訪日外国人が増えたのである。

人は嫌いな国にあえて行こうとはしない


 訪日外国人の増加について、メディアや評論家と称する人々は、ビザの発給が容易になったからとか、円安だからなどという理由を述べている。だが、円安だからといって、人は行きたくないところには行かないものだ。私はどんなに中国の元が安くなっても、あのような国には行きたくない。同じく私はどんなに焼き肉が安かったとしても韓国にも行きたくない。私には韓国人の友達もたくさんおり、身元引受人になっている人もいるが、それでも行きたくない。

 訪日外国人がこれほどまでに増えている理由は、単純である。結局、世界の人々は日本が好きなのだ。

東南アジアの人々が信頼している国は?


 日本の一部の新聞を読んでいると、いかにも日本が海外から嫌われている国であるかのような印象を受ける。確かに、日本の近隣の3カ国は日本が嫌いなのであろう。だが、それ以外の国々はみんな日本が好きなのだ。アジアの国々が日本を嫌っているというのは大ウソである。

 平成26年3月に外務省の委託で行われたASEAN7カ国に対する世論調査では、どの国を最も信頼しますかという質問について、最も信頼されている国が日本であるという結果が出た。各国において18歳以上の識字層約300名を対象にオンライン方式で実施されたものだが、1位が日本で33%、2位はアメリカで16%、3位がイギリスで6%だった。経済成長著しい中国は5%で、韓国は2%である。アメリカやイギリスはかつてASEAN加盟の国々を植民地化し圧政を敷いたにもかかわらず、中韓よりも信頼度が高い。

外務省「平成25年度ASEANにおける対日世論調査」


 また、華僑の多いシンガポールやマレーシアなどは、政治や商業の中枢にも中国系の人々が多く、普通なら自分たちの故郷である中国を信頼するのではないかと思うところである。ところが、シンガポールは1位がアメリカと日本で共に13%、中国を信頼する人はわずか1%しかいなかった。マレーシアも1位が日本で30%、中国を信頼してる人は8%に過ぎない。つまり、彼らは中国のことをよく分かっているのだ、信頼できないと。

 ドゥテルテ大統領に代わり注目を集めるフィリピンも、国民の意識としては、旧宗主国のアメリカが1位で41%、次いで日本が31%。中国はたった2%だ。これが世界の真実である。

外務省「平成25年度ASEANにおける対日世論調査」


自分の国を「いい国だ」と言う人は“右翼”


 私がセミナーなどで、このような話をすると、参加者からよく次のような質問をされる。

「なぜこういう情報がマスコミに出ないんですか? しかもこれは日本の外務省が出している資料なのに、どうして報道しないのでしょうか。このような情報を教えてもらえれば、私たちだって胸を張れるじゃないですか。私は、日本人はアジア中の嫌われ者だと思っていました」

 私は次のように答えている。

「日本には、日本が信頼されているとか、好かれているとか、日本の未来は大丈夫だ、とかいうことを言ったりすると、すぐに“あの人は右だからね”とレッテル貼りをする風潮が強いからです」

 自分の国がいい国だと言うと“右翼”だと言われる国など、世界中に日本以外ない。だが日本では、戦後から現在に至るまで子供たちに、日本は悪い国だったんだ、未来なんかないんだ、と教えている教師がいる。最近では、NIE(Newspaper in Education)といって学校などの教育現場に新聞を教材として活用しようと普及活動を進めつつ、特定の思想を植え付けようという意図の感じられる新聞社もある。

「知らなかった」「だまされた」では済まされない


 だが私たちは、「知らなかった」「だまされた」ではいけない。こういう事態を知らなかったというのは、勉強不足である。事実を知らないのは罪である。そして、大人たちが子供たちに事実を伝えないのは重罪だ。

 だから、今、なぜ2000万人以上もの外国人が日本に来るのかを、ぜひ子供たちに教えてあげてほしい。あなたたちのお父さん、お母さんが生まれた頃、海外から日本に来る人は30万人程度しかいなかった。今、円安といっても1ドル120円だが、あの頃は円安どころではない、1ドル360円の時代だった。それでも日本に来た外国人は30万人程度だった。このような実態を正確に知らなければいけない。そして、多くのアジアの人々は日本を信頼しているという実態を知らなければいけない。

【佐藤芳直(さとう・よしなお)】
S・Yワークス代表取締役。1958年宮城県仙台市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、船井総合研究所に入社。以降、コンサルティングの第一線で活躍し、多くの一流企業を生み出した。2006年同社常務取締役を退任、株式会社S・Yワークスを創業。著書に『日本はこうして世界から信頼される国となった』『役割 なぜ、人は働くのか』(以上、プレジデント社)、『一流になりなさい。それには一流だと思い込むことだ。 舩井幸雄の60の言葉』(マガジンハウス)ほか。

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