大統領選に影響を与えたアメリカでさえ無宗教化が進む(宗教と日本人②)

初詣で賑わう明治神宮

初詣で賑わう明治神宮

思った以上に宗教とかかわる日本人

 自分の宗派は何かと尋ねられた際、ほとんどの人は家の宗派をいうのだろう。しかし、その次に、「意識的してその宗派の活動を行っているか」と尋ねられると、やっていることは「お墓参り」や「実家に帰った際、仏壇でのお祈り」などと答える人が多いのではないか。  私たち日本人の多くはどこかの宗教に属している。そうはいっても、自分は熱心な信者ではないとの意味で、「無宗教」という認識でいる人が多い。  実家に仏壇がある家でも、自分が親元から離れて独立するようになると、宗教的な自覚をもつことなく生活するというほうが、普通の感覚だ。家族を持って家を新築したからといって、わざわざ仏壇を置くという人は多くはないだろう。  お墓参り、クリスマス、初詣…。いつもいわれることだが、多くの日本人はこれらの「宗教的な行動」をすることを特に気にすることもない。  これらは、仏教、キリスト教、神道が混在している。しかし、当の私たちは、年中行事とかイベント感覚に近いので、クリスマス・パーティをやったり、初詣に行って神頼みをすることがおかしいことだとはまったく思わない。  私たちは宗教を意識しない生活をしているにもかかわらず、あえて「無宗教」だというときには、「日本人は世界の人と比べて宗教にこだわりがない」という自虐的な意味も込められているようだ。

欧米での無宗教化

 しかし、宗教学者の島田裕巳先生によると、じつは欧米でも、「無宗教」が広がっているという(『日本人の信仰』育鵬社刊)。  例えば、アメリカでは、昨年の大統領選挙の際、トランプが勝利を収めた背景に、当初は反対していたキリスト教福音派の8割以上がトランプを支持したからというものがあり、いかに宗教の影響力が大きいかを証明した例だともいわれている。  だが、このようなアメリカでも、年々教会離れが起こっており、教会に信者が行かなくなっているのだそうだ。だから、世論調査を行うと「無宗教」だとの立場をとる人がふえているという。  これはヨーロッパでも同様で、フランスも教会に行く人が減ったことで教会が成り立たなくなっており、そうなると司祭の希望者も減っているとう現実がある。  それ以外の国でも、ロシアやベルギー、ドイツでも教会への出席率が大きく下がっている。これらの話から、とくに日本だけで無宗教が進んでいたのではなく、欧米の先進国でも同じように「無宗教」が進んでいる傾向があるというのがわかる。

イスラム教だけは拡大している

 ただし、例外もある。それはイスラム教で、信者が増加傾向にある。現在、世界第2の宗教で、キリスト教に次ぐ16億人の信者をもつイスラム教は、今世紀末には世界最大の宗教になるといわれている。また、中国においてもキリスト教徒が増加しているのだという。  イスラム教や中国のキリスト教などは、経済発展による人口の増加と宗教との関わりが大きいこともある。西側先進国に限っていうと、やはり宗教離れが進んでいると見るべきだろう。(育鵬社編集部A)
日本人の信仰

人気宗教学者が日本人の「信仰のあり方」を、歴史的な側面を踏まえながら多角的に考察する。 日本人の宗教観がよくわかる本。

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