日本人とは何か(第1回)

縄文遺跡(三内丸山遺跡:青森県)

縄文遺跡(三内丸山遺跡:青森県)

縄文ブームの深層とは

 東京国立博物館で開催されていた「特別展:縄文―1万年の美の鼓動」が盛会のうちに閉会した。「縄文女子」なる言葉も生まれて、いま「縄文」はブームである。  いま「縄文」の何が、現代日本人の心をとらえているのか?  その深層について、一つの答えを提示している本がある。  武光誠・著『日本人なら知っておきたい日本』(育鵬社刊)だ。  本書を、モスクワ在住の国際関係アナリストの北野幸伯氏(著書に『中国に勝つ 日本の大戦略』育鵬社刊などがある)が、メールマガジン『ロシア政治経済ジャーナル』「日本の『円の思想』が世界を救う?」(1830号・2018年9月3日)で論じてくださったので、ご本人の許可を得て、以下に転載する。   こんにちは!  北野です。  28年モスクワに住み、一時帰国する頻度は、平均年1回でした。  そのたび思うのは、「日本は、実に不思議な国だ」「日本人は不思議な民だ」ということです。  なぜそう思うのか、一言で説明するのは難しい。  しかし、あえて説明を試みれば、日本人は、  「和を崩さないために、自己主張を、極めて自然に抑えることができる」  ということでしょうか。  皆さんの中にも、外国に行き、「みんな自己主張をバンバンするので驚いた!」という方がいるのではないでしょうか?  モスクワでもそうです。  みんなが「人生は戦いだ」と認識しているので、何かあれば「自分の正当性」を証明するために必死で戦います。  ところが、日本人であれば、どっちが悪いかはともかく、「円満解決」を目指すことが多いようです。  結果、ケンカも訴訟も少ない。(あることはありますが。)  私は、「この日本の特殊性の正体は、何なのだろう?」  「どこからきたのだろう?」  と考えていました。

円の思想とは?

 最近、明治学院大学・武光誠教授の新刊  『日本人なら知っておきたい日本』  を読みました。  実に興味深い本でした。  武光教授は、日本の大昔からの特徴を、こんな風に解説しておられます。  (〈 〉内は『日本人なら知っておきたい日本』からの引用)  〈●精霊崇拝からつくられた「円の思想」  縄文人は円形を好んだ。そのために縄文土器の文様には、円を基調としたものが多い。円形を好む縄文人の発想を、「円環状世界観」と呼ぶ考古学者もいる。かれらの円環状思考とは、このような考えを示すものである。  「自然界には区切りがなく、自然界ではすべてのものが互いに深くつながって存在している」  春にフキノトウ、ワラビなどの山菜が採れ、秋には柿、栗などの果実やさまざまな茸が得られる。しかし春が終わると、山菜が滅んでしまうわけではない。秋の終わりに果実が落ちて茸が見られなくなるが、悲しむことはない。  夏が終われば秋の山野の恵みが、冬が終われば春の食物が現れる。縄文人は、人間とは、このような終わりのない自然界の恵みによって生かされている存在なのだと考えた。  だから縄文人は、円形の広場をつくり、そこを自然をつかさどる神々を祭る場とした。〉  〈私は、このような集落を営む縄文人の思想を「円の思想」と呼んでいる。〉  「円の思想」  私は、この言葉、はじめて聞きました。  もう少し具体的にいうと、なんなのでしょうか?  〈それは精霊崇拝をふまえた、次の三点の教えから成るものである。  1、自然を大切にする。  2、人間を大切にする。  3、明るい気持ちをもって人生を楽しむ。  縄文人は、この三点を心掛ければ、自然界を動かす精霊つまり神々の恵みを受けられると考えていた。〉  この三つ、なんだか今の日本にも通じる気がします。  たとえば、  ・自然を大切にする  外国人が日本に来て驚くのは、緑の多さですね。  東京から実家の長野に帰る電車から見える景色は、80%ぐらい緑の山と森林です。  ・人を大切にする  妻と娘が、日本のお店で服を買った。  すると、紙袋の上にビニール袋をかぶせてくれた。  妻が、「これは?」と聞くと店員さんは、「雨が降りそうなので」と答えた。  妻は、感動して泣きそうになったそうです。  ・明るい気持ちをもって人生を楽しむ。  日本人は、どこにいっても笑顔ですね。  もちろん、全員がそうとはいいません。  それでも、全体的にみると、ポジティブなエネルギーが満ちています。  ……この続きは「日本人とは何か」(第2回)で。  (文責:育鵬社編集部)
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