「愛国のリアリズム」という思考法②――「一帯一路」は中国の覇権主義そのものだ
愛国のリアリズムが日本を救う』で、中国の習近平国家主席が提唱・推進している経済圏構想である「一帯一路」について次のように述べる。
「一帯一路」の「一帯」とは(陸路を意味し)、中国からカザフスタン、ロシア、トルコなどを通って、フランス・ドイツまで鉄道や道路のルートと拠点を整備して、物流経路として各地域を活性化しようとするものだ。「一路」とは、海路を意味しており、各国の港などを整備していくとしている。
つまり、鉄道、道路、港湾のインフラ整備を行って、陸と海のシルクロードを作るという構想で、巨大公共事業を中国国外で行うというものである。
中国が国内で何かをやる分には人権侵害などを除き許容できるが、海外へ進出してきたら要注意である。(前掲書、117ページ)
と警鐘を鳴らす。そして、この一帯一路には中国の覇権主義体質が如実に表れているとして、具体的な証拠を提示する。大事なポイントなので、長くなるが引用してみよう。
では、中国をどう認識するかが問われる。高橋洋一氏は、最新刊の『高利貸しさながらの中国の覇権主義体質
実際、2018年1月、スリランカ政府は中国の援助で建設した南部ハンバントタ港の管理会社の株式の70%を中国側に99年間譲渡することで合意した。この港は建設費の13億ドルの大半を中国からの融資でまかなっており、最高6・3%にも上る高金利にスリランカの財政は耐えられなかった。 また、中国が香港からポートスーダンまで延びる、中国の海上交通路戦略「真珠の首飾り戦略」の一部で重要拠点となっているモルディブでは、少なくとも16の島を中国の関係者が賃借し、港湾開発やインフラ整備を進めており、モルディブの対外債務の約8割は中国が占め、返済に行き詰まった場合、島やインフラ設備をさらに中国に引き渡さざるを得なくなる可能性があるとナシード元大統領が指摘している。 「一帯一路」構想が出てきた時に懸念されていたことが現実となった。「一帯一路」は、まさに中国版の国際秩序のやり方である。具体的には、金利が高く、返済できなければ領土を奪うというやり方だ。 先進資本主義国のやり方は、先進国なので低い金利で調達可能だから、低い金利で融資する。返済が滞っても、リスケ(返済猶予)を設けて領土を奪うという蛮行は決して行わない。「一帯一路」構想が出た時、国内左派から、「バスに乗り遅れるな」という議論が出てきて、筆者はそんなボロいバスに乗るなと言ってきたが、まさに予言的中だ。左派識者のデタラメを物語るものだ。 このような構想を保障する意味で中国の海軍の増強が行われ、「海洋強国」への布石を着々と打っている。2030年までには4つの空母打撃群を運用し、米海軍への対抗意識も見せている。 先にも書いたが、韓国の文大統領は親北であり、つまり大国中国を意識していることは間違いない。中国としては、北朝鮮を経由して、南北の連邦制を作らせて、朝鮮半島で統一和平という名の下に、朝鮮半島すべてを社会主義国化したいと目論んでいるはずだから、日本も安穏とはしていられない。(前掲書、117~119ページ) アジアの国際政治に造詣の深いインド人の碩学であるブラーマ(ブレーマ)・チェラニー氏(インド外務省の政策顧問)によれば、日本のこの種のプロジェクトの金利は0・5%であると述べている(大紀元日本、2018年07月17日)。確かに日本のODAにおける円借款は非常に低金利となっており、相手国によっては0.1%を切る場合もある。中国の一路一帯の6.3%という金利は異様に高く、また「返済できなければ領土を奪うというやり方」は、高利貸しさながらであり、中国の覇権主義体質を世界に露呈した。 高橋氏は、このように客観的な事実を提示した上で「(一帯一路のバスに乗り遅れるなと述べていた)左派識者のデタラメを物語る」と記しているが、その通りである。前掲書『愛国のリアリズムが日本を救う』では、さらに中国に関する著者の分析があるので、その部分を下の画像で紹介する。 さて、「中国ムラ」に所属している学者や評論家、ジャーナリストなどは、中国からさまざまな便宜を図ってもらっているのか、客観的な事実が明らかになっているにもかかわらず、中国に対する「前向き」の批判も行わない。中国に親近感を覚えているのは構わないが、「ムラ」の権益のためだけに発言しているのは残念でならない。 さらに、裏付けのない理想や観念的なイデオロギーだけで発言するのは、共同体で共に生きる国民に対して余りに無責任と言えよう。【3に続く】文責=育鵬社編集部M
『愛国のリアリズムが日本を救う』 愛国に右も左もない。あるのは、日本に対する責任感だ! 左派リベラルの観念論を論破し、国益と政策的合理性の追求を解き明かした渾身の書 |
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