「愛国のリアリズム」という思考法③――行政改革と民営化、規制緩和は国益に適う

経済財政諮問会議(平成15年1月)右から竹中平蔵大臣、小泉純一郎首相、左端は塩川正十郎大臣

 本連載の1回目2回目では、中国の覇権主義体質と「一帯一路」の問題点を明らかにした(9月13日公表)。日本外交の最大の課題は、この中国問題である。

 では、内政の最大の課題は何か。元財務官僚の高橋洋一氏は、
「経済政策の最大の目標は失業率を減らし雇用を増やすこととだ。……職があれば、社会の安定にもつながる。例えば、失業率が低くなれば、自殺率は顕著に下がる」
 と述べており、アベノミクスの発動により安倍晋三内閣は現在のところ、これを実現しているのである。(本ニュースサイト【高橋洋一氏は現代日本の救世主か③――安倍政権は、愛国的左派政策で失業率を劇的に低下させた】参照)

 人々の雇用が確保されている今、内政の次なる主要課題は何か。高橋氏は最新刊『愛国のリアリズムが日本を救う』(発行=育鵬社、発売=扶桑社)で、
「特に経済成長を目指す政策において、長期的な見地から重要である『規制緩和』は積極的に取り組むべきだと思っている」(16ページ)
 と述べ、これまでの民営化の実績を踏まえ、一層の規制緩和(改革)の推進を説く。
 なぜ民営化が必要だったのか? さらになぜ一層の規制緩和が必要なのか? 
 人々の雇用を確保するには経済成長が必要であり、民営化と規制改革が経済を正しく発展させるからである――と説く。

構造改革、郵政民営化に執念を燃やした小泉政権のブレーンとして


 少し歴史を振り返ってみよう。高橋洋一氏といえば、小泉純一郎政権(2001[平成13]年4月~2006[平成18]年9月)の時に、知己であった竹中平蔵氏が経済財政政策担当大臣となったため、その縁で竹中氏の政策スタッフを兼務することとなり、その後、補佐官となる。

 この間、高橋氏は道路公団の民営化に携わり、さらに郵政民営化の舞台裏を取り仕切り、郵政民営化法案を作成する。この法案は自民党議員の造反があり2005(平成17)年7月、衆議院では僅差で可決されたが、8月に参議院で否決されたため、小泉首相は、国民に直接賛否を問うとして「郵政解散」に打って出た。その結果、衆議院で自民党が圧勝し、これを受け参議院も賛成に回り、郵政民営化法案はその年の10月に成立したという難産の法案であった。

小泉純一郎首相の郵政民営化へのメッセージ(2004年12月「だから、いま民営化」のパンフレットより)

 小泉首相は、なぜ郵政民営化をこれほどまでに推進しようとしたのか? その答えは上の画像にある。これは「――郵政民営化の基本方針――だから、いま民営化」(2004年12月ころ作成のパンフレットより、首相官邸HP)での小泉首相のメッセージである。

 冒頭に記されている「郵貯や簡保の資金は、特殊法人の事業資金として活用されてきた」とあるのは、「財政投融資」(財投)を意味している。

 この財投とは、郵便貯金や簡易保険などの資金を、かつての大蔵省「資金運用部」が投資や融資で運用していた仕組みのことを指す。投融資先は特殊法人が主で、そこで高速道路やダム建設の事業資金となったが、それらの事業が一巡し一定の役割を終えてもその枠組みは残り、政治家と業界の癒着による無駄な事業の推進という利権構造、官僚の天下り先など、さまざまな弊害を生み出していた。

 何よりも問題であったのは、郵貯の資金などを大蔵省資金運用部が特殊法人に貸し出し、特殊法人は所定の金利を含め返済しなければならないが、そもそもが「親方日の丸」の構造で「どんぶり勘定」であったため、ともすると赤字体質が常態化し、その赤字補填のために税金が投入されるという本末転倒な状況となっていた。

 つまり小泉政権は、道路公団の民営化により、ファミリー企業へのカネの配分という蛇口(出口)を閉めたが、郵政民営化では、第二の予算といわれる財政投融資というカネの入り口を閉め、官僚と政治家の利権構造の打破を試みた。確かに道路公団というカネの出口をいじるよりも、何倍も効果がある。その意味で郵政民営化は小泉首相が言うように構造改革、行財政改革の本丸であり、それを国民は支持した。

官僚の手の内を知り尽くした高橋洋一氏の手腕


 郵政解散で大勝した小泉首相が、次に手を付けたのは「特別会計」の整理合理化である。この特別会計には、小泉政権の発足時に財務大臣に就任した塩川正十郎氏(まさじゅうろう、1921~2015年)の名答弁がある。

「母屋(おもや)ではおかゆ食って、辛抱しようとけちけち節約しておるのに、離れ座敷で子供がすき焼きを食っておる、そういう状況が実際行われておるんです。……小泉(首相)の言っている構造改革、行政改革の本体はそこにあると実は思っておるんです」(2003[平成15]年2月25日、衆議院財務金融委員会での答弁)

 ここでいう母屋は一般会計を指し、離れ座敷は特別会計を示している。国(または地方自治体)の予算において、毎年度の通常の行政経費が一般会計であり、特定の歳入に基づく特定の歳出を特別会計と呼んでいる。地方自治体の水道事業などは特別会計である。

 塩川財務大臣が答弁を行った当時は、国の特別会計の歳出総額は一般会計の5倍もあり、また、道路整備や国民年金など30以上の分野の特別会計は、一般会計より監視の目が届きにくく、また無駄も多く財投と同じく官僚や政治家の利権構造の温床となっていた。

 そこで小泉政権では、特別会計の整理合理化を推進し、現在では約半分に削減されている。

 こうした構造改革の総仕上げとして、行政改革推進法(簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律)が2006(平成18)年5月に成立したが、この法案を立案し、特別会計改革の道筋をつけたのが高橋洋一氏であった。

 この法案は、①政府系金融機関、②特別会計、③政府の資産・債務のそれぞれの改革、さらに④公務員の総人件費抑制、⑤独立行政法人の見直し……という五本柱からなっており、官僚の既得権益にくさびを打ち、今日に至る行財政改革の原典ともいうべき基本法の性格を有している。

 官僚の手の内を知り尽くした高橋氏だからこそ、成し遂げられたと言えよう。【4に続く
文責=育鵬社編集部M

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