この世界の荒波をどう生きるか(4)
少子化対策の見本としてのロシア
昨年の日本人の国内出生数は86万4千人で、前年比5.92%減の急減、1899年の統計開始以来、初めて90万人を下回った。衝撃的な数字である。 そうした状況を踏まえ、前回に続き、北野幸伯・著『日本の生き筋――家族大切主義が日本を救う』(育鵬社)に示された対策を、以下に紹介したいと思う(以下転載)。出生率を短期間で劇的に増やしたロシアの方法
1999年、ロシアの人口は、「年間70万人」という超スピードで減少していました。 「このままだとロシアは消滅する」と、マジメに心配している学者もたくさんいたのです。 この年、ロシアの合計特殊出生率は、なんと1.16だった。 ところが、2012年は1.69、2013年1.71、2014年1.75、2015年1.75! 死亡率の低下も手伝って、人口が「自然増」しはじめている。 これに関する記事を見てみましょう。 〈ロシアの出生率 記録更新(2015年6月19日 Sputnik日本) ロシア保健省は、ロシアの2014年の出生率が、過去最高となったと発表した。2013年の出生率は、1990年代以降初めて死亡率を越えたが、2014年はさらによい結果が出た。 自然増加数は3万3600人で、死亡率も低下している。 ロシアでは2014年、出生率が前年比0.8%増となり、出生数は192万9700人から194万7300人となった。 これは、新生ロシア史上、最高値だ。〉 「少子化問題」に苦しむ日本としては、「どうやって出生率増やしたの?」ときいてみたいですね。 その秘密の一つは、「母親資本」(マテリンスキー・カピタル)という制度です。 「母親資本」とはなんでしょうか? 要は、「子供を2人産んだ家族は、大金がもらえる」という制度。 導入されたのは2007年ですが、当時「平均年収の2倍分もらえる」という話だった。 日本の感覚でいうと、「子供2人産んだら800万円もらえる」という感じでしょう。 しかし、もらうお金の「使い道」が決められている。 主に、 ・住宅関係(住宅の購入、修繕など) ・教育関係(子供の教育費) 2015五年度の「母親資本額」を見ると、45万ルーブルでした。 日本円で、90万円程度です。 「90万円もらえるなら、子供2人産むわ!」 日本人の感覚では、ちょっと想像できないですね。 それで私は長年、「母親資本は効果なし」と思っていた。 しかし、実際出生率は上がっているわけで、「なぜだろう?」と疑問に思っていたのです。 ところが最近、「モスクワから300キロ離れたところに家を買った」という人に会い、考えが変わりました。 「家いくらしたの?」と私の妻が聞いた。 「40万ルーブル」(80万円!) この会話で私は、悟りました。 「そうか、母親資本90万円は、田舎の人にとって大金なのだ。 それで、家が買えるほどの」 要するに、「2人子供を産むと、家を買える」から、出生率が増えている。 もちろん、「母親資本」が唯一の理由とはいいません。 しかし、これが「大きな動機」になっていることは間違いないのです。(次回に続く) 北野幸伯(きたのよしのり) 国際関係アナリスト。1970年生まれ。19歳でモスクワに留学。1991年12月、現地でソ連崩壊を目撃する。1996年、ロシアの外交官養成機関である「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を、日本人として初めて卒業(政治学修士)。1999年、メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)を創刊。「わかりやすい!」「面白い!」「予測があたる!」と話題になり、読者数が急増しつづける。RPEは現在、会員数約6万人。業界最大手「まぐまぐ」の「ニュース、情報源部門」で日本一のメルマガである。また、2015年「まぐまぐ大賞」で総合1位を受賞。「日本一のメルマガ」と認定された。リアリズム大国ロシアの首都モスクワに28年滞在。アメリカや、平和ボケした日本のメディアとは全く異なる視点から発信される情報は、高く評価されている。2018年、日本に帰国。 著書に、『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』(草思社)、『隷属国家日本の岐路』(ダイヤモンド社)、『プーチン最後の聖戦』『日本自立のためのプーチン最強講義』『日本人の知らないクレムリン・メソッド』(以上、集英社インターナショナル)、『中国に勝つ 日本の大戦略』『日本の生き筋』『米中覇権戦争の行方』(以上、育鵬社)などがある。 著者のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」 (http://www.mag2.com/m/0000012950.html)
『新日本人道』 この世界の荒波を私たちはどう生きるか ロシア滞在28年で考えた日本復活への7つの指針 |
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