都市の強靭化: 六本木ヒルズのエネルギー・イノベーション1
巨大地震でわが国は後進国化する
近い将来、首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大都市に襲い掛かる大地震で、わが国は深刻なダメージを受けることは必至だ。 それら巨大地震の30年確率はいずれも70%。すなわち、首都直下地震か南海トラフ地震の「少なくともいずれか一方」が起こる確率は実に9割超。 この事実を踏まえるなら、21世紀中盤以降の日本の繁栄はその巨大地震に対する「強靱性」を持つか否かという一点に、かかっているという実態が浮かびあがる。 わが国に十分な強靱性がなければ、いずれかの巨大地震あるいはその連発によってわが国の経済、産業は致命傷を負い、中進国、あるいは後進国レベルの国家にまで凋落することは決定的となる。 すなわち国民所得は大幅に縮小し、国民の生活水準は、高度成長期前程度のレベルにまで凋落することが真剣に危惧される。 一方で、十分な強靭性があれば、そんな悪夢を避け、わが国の繁栄を22世紀、23世紀へと引き継いでいくことも不可能ではなくなる。 だからこそわが国は今、「国土強靭化」に可及的速やかに取り組まねばならないのである。 しかもわが国にとって深刻なのは、ただ単に経済や産業、そして生活水準の質が第二次大戦後の状況にまで凋落してしまう、という点だけではない。 欧米列強に追い付く途上にあった戦争直後の日本人は、どれだけ貧しくとも「明るい未来」を期待する希望に満ちた心を共有することができた。 ところが国力がピークを迎え、衰退していく過程で生ずる巨大地震による大打撃は、国民の暮らしを貧しくさせるだけではなく、未来への希望それ自体も打ち砕くことにもなりかねない。 つまり来きたるべき巨大地震で、日本国家それ自体の「心を折って」しまいかねないのである。そうなれば、わが国は二度と這い上がることのない奈落の底へと叩き落とされることともなろう。 これこそ、国土強靭化が、単に国民の生命と財産を守るための防災対策を超越した次元で、わが国の命運のために真剣に求められている所以である。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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