都市の強靭化: 六本木ヒルズのエネルギー・イノベーション5

「危機管理」に敏感な企業が反応

 ところで少し前までは、「まさか」の危機を想定した「BCP」(事業継続計画、BusinessContinuity Plan:何らかの危機的事態が生じた時にどのように事業を続けていくかを事前に取り決めておく計画)は、ほとんど重視されてはいなかったのだが、2001年9月11日の米国での同時多発テロ以降、BCPは急速に重視されるようになっていった。  六本木ヒルズは、そんなBCPが注目されるようになった2003年にオープンした。  そんないきさつから、上述のような形で、危機管理を重視する企業の要請にこたえる強靭性を兼ね備えていたのである。  結果、六本木ヒルズはゴールドマンサックス社をはじめとした外国企業に高く評価され、国際的な企業誘致が円滑に進んでいったのである。  そしてわが国においても、東日本大震災以降、多くの企業が首都直下地震に対する危機感を募らせ、BCPはかつてよりも圧倒的に重視されるようになった。  結果、六本木ヒルズは今、海外のみならず国内の企業からもオフィス立地の視点から高い評価を受けるに至っている。  そしてその高い強靱性は、六本木ヒルズそれ自体の「資産価値」を大いに高める帰結をもたらしている。

自立分散型エネルギーシステムによるBCD( 事業継続地区) の形成

 東京を含めた日本の各巨大都市は、巨大地震の深刻なリスクにさらされているうえに、それに対する脆弱性が極端に高いという問題を抱えている。  そんななかで、単なる耐震補強「だけ」ではない六本木ヒルズの強靭な都市エネルギーシステムは、わが国の「都市」の強靭化行政にとっては重大かつ先進的なイノベーション事例を示すものとなった。  そもそも、六本木ヒルズのエネルギーシステムは、一般に「自立分散型」と呼ばれるものであり、政府が閣議決定を通して策定している国土強靭化の基本計画において強く推奨されるものであった。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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