追悼 東城百合子先生(3)
根を育てる
『あなたと健康』主幹の東城百合子先生が、令和2年2月22日、逝去されました(享年94)。先生は自然食・自然療法研究家の大家として長年にわたり活躍され、生涯現役を貫かれました。 当社からは、『あなたと健康』創刊45周年記念出版となる『健康になる食べ方 幸せになる生き方』と『長生きできる食習慣――健康長寿にはわけがある』を刊行いただいたほか、日本の歴史を後世に伝えるための教科書事業にも、多大のご理解・ご支援を賜りました。 ここにご冥福をお祈りするとともに、ご遺徳を偲び、東城百合子先生の言葉を紹介します。『健康になる食べ方 幸せになる生き方』(「まえがき」)
月刊『あなたと健康』が創刊45年になりました。「自然を師に学んでいこう。自分を育てる人生を歩んでいこう」と決心し、たった一人で、30万円の借金をして3000部を印刷、そのすべてを無料配布ではじめました。昭和48年のことです。 その前年、夫が突然、家族を捨てて家を出て行きました。二人の息子とともに残された私は、どうしたらいいのかわからず、苦悶の涙に明け暮れていましたが、聖書の仲間に支えられ、そして何よりも、私自身のいのちの源でもある「自然の力」を信じることで、再出発することにしたのです。 その際、過去の問題を引きずったままでは、新しい雑誌『あなたと健康』を出すことはできないと考え、すべての財産を夫に譲り渡して、私は「空っぽ」になりました。まったくのゼロからの出発でした。 「人生は晴ればかりじゃない。嵐や雨もある。この日のために、あなたを育ててきた。きっとあなたはやれる」 いちばん苦しい時、母は涙を流しながらそう言って、私を励ましてくれました。 母の愛とともに、創刊の頃、私に人生の真実を示し、力を与えてくださったのが、常岡一郎先生(明治32~昭和64年)でした。 常岡先生は私と同じように、若い頃に結核を患い、死線を越える経験をした後、完治され、『中心』という健康誌を出されていたのですが、その『中心』が、私が人生のどん底であえいでいる時に、家のポストに入っていたのです。それがきっかけで、私は先生の著作すべてをむさぼるように読み、悩みを手紙にしたためて送ったのです。ほどなく先生との出会いをいただき、その後も長くご指導いただくことになりました。天が与えてくださった不思議な〝ご縁〟でした。 「力も汗も、知恵も力も親切も、時間も物も金も出して空(から)になって学べば人生はひらかれる」 「空になるのには、自分のいちばん大切なものを捨てることだよ。人はお金が大切だという。そのお金を人のために使って喜んでもらう。こちらは空っぽだけど失ったのじゃない。形が変わって喜びとなる。相手が喜び、それで自分が喜び、喜びの種をまく。宝を天に積むとはそのことだよ」 「根のごとく枝葉が出る。根が大事。根を育てるのだよ」 常岡先生からは、本当に多くのことを学びました。 (次回に続く) 東城百合子(とうじょう・ゆりこ) 自然食・自然療法の大家として知られる。大正14年岩手県生まれ。昭和17年当時日本の栄養学の草分けだった佐伯矩博士に師事、栄養士となる。昭和24年重症の肺結核となったが、自然療法によって自らの病気を克服。それをきっかけに健康運動を始める。世界的な大豆博士といわれ、当時国際栄養研究所所長、国際保健機構理事のW・Hミラー博士に師事、自然の栄養学を学ぶ。昭和35年には沖縄に渡り、全島に健康改革の灯をともした。昭和39年沖縄より帰京、東京に居をすえて、出版活動、自然食料理教室、栄養教室、生活塾、講演活動、健康運動に力を注ぐ。昭和48年5月、月刊誌『あなたと健康』(あなたと健康社)を出版し、以来、出版活動と共に運動を進め、今日に至る。その確かな理論と実績に、全国から勉強に訪れる人が多い。著書に、100万部を突破したベストセラー『家庭でできる自然療法』(あなたと健康社)、『食卓からの健康改革』『心を育てる子どもの健康食』(以上、池田書店)、『お天道さま、ありがとう。』『かならず春は来るから』(以上、サンマーク出版)、『食生活が人生を変える』『自然療法が「体」を変える』『食生活が子どもの人生を変える』『「免疫力が高い体」をつくる「自然療法」シンプル生活』『生きた実例と手引き「自然療法」』(以上、三笠書房)、『健康になる食べ方 幸せになる生き方』『長生きできる食習慣』(以上、育鵬社)などがある。令和2年2月22日逝去。
『長生きできる食習慣――健康長寿にはわけがある』 肥満・生活習慣病にさようなら! いのちの力を養う食事と生き方 医者いらずの健康法 |
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