新型コロナウイルスに打ち勝つヒントを歴史に学ぶ

国難に先人はどのように立ち向かったのか

 2019年12月、中国の武漢に端を発した新型コロナウイルスは、2020年3月には世界中を席巻。WHO(世界保健機関)はパンデミック(感染症の世界的大流行)を宣言し、各国は国を閉じ、世界経済は恐慌的状況に入っている。  加速度的感染拡大は、病床や医師の不足に直結し、「医療崩壊」を招き、世界での感染者数は、250万人を超えた(4月22日現在)。一方、日本は初の感染確認は1月15日、武漢から1月6日に帰国した神奈川県在住の30代男性が一例目で、4月22日時点で日本国内での感染者数は、約1万2000人。爆発的感染は予断を許さない状況だ。  この国難に私たち日本人はどのように立ち向かえばよいのだろうか。そのヒントは、近現代史のリーダー像にあるかもしれない。

第二次世界大戦の分水嶺となったミッドウェー海戦を戦ったリーダー、南雲忠一海軍大将(左)と山口多聞海軍中将(右)。この時の二人の決断が明暗を分けた。

 今回、歴史の中に観る日本の強さを学ぶことこそ、企業の強さを生み出す根源であると唱える経営コンサルタントの佐藤芳直氏が出版する『日本近代史に学ぶ 日本型リーダーの成功と失敗』(育鵬社)から、文章を紹介したい。

「日常」は「非常」のためにある

 世界で発生するマグニチュード6以上の大地震は、その20%が日本周辺で発生します。地震、台風、火山、そして多発する豪雨。まさに日本は天災大国であり、「無常大国」です。  常なるものなどない。つまり、無常こそ常であると、日本人はこの美しくも鳴動を繰り返す列島に住み、理解してきました。  日常とは非常に備えての準備の時であり、非常とは学びの時なのです。手洗い、うがい、咳エチケットは、日本人にとっての「日常」です。江戸時代末期、アメリカから派遣されたタウンゼント・ハリスは、日本人の風呂好きに驚き、庶民が集う銭湯の混浴の風情に閉口しながらも興味を示しています。  神道に由縁を持つ日本人の「清め」に対して日常の意識は、習慣となって感染症が蔓延する非常時に効果を発揮していると思わされます。  日本人が安定定住農耕社会を2000年以上継続する中で、いくつかの習慣を受け継いできました。誰かの迷惑にならないように考え、行動する、それは日本人の「教養」となって、社会基盤、社会資本となっています。世界中の人々が驚愕する山手線の運行は、誰に言われなくても行列を作り、乗る人は下りる人を待ち、乗ったら奥へと進む日本人の教養が可能にしています。  そして何よりも受け取った今を、よりよくして子孫へ渡そうとする「恩送り(おんくり)」の哲学は、今の日本を創ってきた根本だと思います。大東亜戦争の敗戦で焼け野原となった日本が、驚異的経済成長を遂げたのも、より良い未来を子孫へとの思いが中心にあったからこそでしょう。

希望色で明日を見る

 日本人は本来、希望色で明日を見ようとします。未来に恋をして、恋する明日を思い描き、今日を頑張ろうとします。  日本型のリーダーは、恋のできる未来、違う言葉で言えば、高い理想を掲げ、言葉にして現実という壁にぶつかった時、率先して乗り越えようとします。この度上梓した『日本近代史に学ぶ 日本型リーダーの成功と失敗』では、日本の近現代史の中から、特に今私たちが学ぶべき場面を取り上げ、その場面で日本のリーダーたちが何を考え、どのように決断し、そして行動したかを詳細に考察しました。 第1章 ミッドウェー海戦に学ぶ「決断の流儀」――南雲忠一と山口多聞 第2章 吉田学校に学ぶ「リーダーの継承術」――吉田茂から田中角栄へ 第3章 東北の一村長に学ぶ「生命尊重」――深沢晟雄の信念 第4章 大戦前夜の日米首脳を狙ったソ連の陰謀――近衛文麿とルーズベルト 第5章 二百三高地攻防戦の男たち――乃木希典と児玉源太郎  歴史に学ぶ。それは未来をどう生き抜くかの羅針盤を学ぶことです。ここにまとめた五つの歴史は、未来への道筋を予見する最高の物語です。本書をお読みいただければ、明治の始めから戦後高度経済成長期に至るまで、リーダーを支えるのは高い理想であり、明日を語る力であることが分かっていただけると思います。  一方、明日を希望色で見過ぎるあまり、希望と現実を混同し、現実に圧倒されてしまうこともあります。どんな民族にとっても同じですが、その長所は時として短所となり、自らに牙をむくこともあるのです。  それにつけても、日本人の変幻自在性を、本書をまとめる中でも痛感しました。軍事においても、経済・経営においても、行政立法においても、です。  それは、常なるものなどない、という無常の発想と、悠久の歴史を持ち、世界一の継続王朝を戴く国柄ゆえでしょう。「不易」と「流行」という対極にある二軸を歴史の中に見続け、継続、継承するための原理原則を庶民に至るまで熟知する日本人の特性に違いありません。  新型コロナウイルスがいつ終息するか、予見することは難しいですが、新型コロナウイルスのパンデミック前の世界と、後の世界が不連続の世界となるであろうことは予見できます。  人間とはどうあるべきでしょうか。その人間性の価値を中心に据えた世界観が生まれるのではないでしょうか。人間の在り方、人間の理想、人間の願いに耳を澄まそうとする、グローバリゼーション後の新しい価値へと。  それは日本人特有の未来を希望色に見ようとする特性が主導する世界ではないかと思うのです。  『日本近代史に学ぶ 日本型リーダーの成功と失敗』は、筆者が主宰する「歴史研究会」を下地に大きく加筆修正してまとめたものです。人間の、日本人の意思決定、決断の流儀に的を絞った歴史研究会は回を重ねていますが、本書もその視点を大切にしたつもりでいます。  時代の大変換期、まさに今を生きる日本人にとって、小さな勇気の種になれば幸いです。 【佐藤 芳直(さとう・よしなお)】 S・Yワークス代表取締役。昭和33(1958)年宮城県仙台市出身。早稲田大学商学部卒業後、船井総合研究所に入社。以降、コンサルティングの第一線で活躍し、多くの一流企業を生み出した。平成18(2006)年同社常務取締役を退任、株式会社S・Yワ ークスを創業。30年以上に渡るコンサルティングでは、歴史観、そして歴史の中に観る日本の強さを学ぶことこそ、企業の強さを生み出す根源であると唱えている。また、人間の教育は歴史に学び、その歴史の中から未来に手渡す種を探し出すことだ と語る。その考え方には多くの熱烈なファンがおり、年間300回以上の講演会には、多数の教育者、行政関係者、そして父親、母親の姿がある。最新刊は『日本近代史に学ぶ 日本型リーダーの成功と失敗』(育鵬社)。
日本近現代史に学ぶ 日本型リーダーの成功と失敗

危機に直面した時、日本のリーダーたちはどう思考、決断、行動したか? リーダーを目指すすべての人に贈る“歴史の教訓”!

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