うつが社内で蔓延する前に、どんな対応が必要なのか?
「“新型うつ”は単なるワガママではなくて、れっきとした病気」とわかってはいても、同じ職場に“新型うつ”の人間がいたら、業務上困らされてしまうのは事実。実際に同じ職場の人間が“新型うつ”になった例を紹介しよう。
◆職場の同僚が“新型うつ”に。そのとき、上司は?同僚は?
「バブルの名残を知っているからこそ厄介」と同僚である加藤博さん(仮名・38歳・情報関連)が語る40代新型うつリーマンの話。
「“非定型うつ”と診断されたのをきっかけに閑職に異動した同僚(40歳)は、その部署の仕事はほとんどしていない。それでいて、景気がよかったころの派手な遊びを知っているから、アフターファイブは古巣の取引先を呼び出してはフグ、すっぽん、フレンチを食べ歩き。プライベート同然の飲食費を経費で計上するんです。“プライベートは元気”という“新型うつ”の特徴を聞いて、なるほどと思いましたよ……」
休職中に資格取得に余念がない新型うつリーマンもいる。
「診断書を提出して以降、休職してさっぱり会社に来なくなったと思ったら、その間に社会保険労務士の資格を取得していた後輩(35歳)。結局辞めたけれど、ちゃっかり古巣である僕らの部署に営業に来るんです。休職のせいで、仕事量が増えてどれだけ苦しめられたかわかっていない。過労でこっちがうつになりそうでした」(宮田浩二さん・仮名・41歳・住宅関連)
◆残業中、休職した後輩の「バリ島なう」の投稿を発見
職場の同僚が“新型うつ”で休職中なのにSNSに元気な姿をアップしている例も少なくない。
「プレス対応が主な仕事で、海外出張も多かった派手な担務から、エクセル、パワーポイントでの数字の管理、資料作成がメインの担務に替わった途端、診断書を提出し、そのまま休職した後輩女子(32歳)。こっちは尻拭いに追われているのに、フェイスブックに『バリ島のきれいな空気に癒されています』なんて書き込んでいるのを見ると、療養中なんだとは思っても、どうしても腹が立ちます」(小松隆さん・仮名・37歳・広告)
こうした例に対して、産業医の榛原氏(仮名)は「同じ部署の人間が休職中だったり、休職はしていなくてもいつ休むかわからないために責任ある仕事が任せられない状態では、当然周りに仕事のしわ寄せがきます。“半年間この状況が続くようなら、必ず人員を増やすようにするから”など、上司がタイムラインを提示することが何より大事でしょうね」と提案する。
同様に、NPO法人教育研究所所長の牟田氏も「仕事量が増えた分、人事評価に反映したり、給与に反映したりと、目に見える形での評価をしてあげるべき」と指摘。
仕事のしわ寄せによる過労で、周囲にうつが伝染る前に、しかるべき対応が必要なのだ。
【榛原藤夫氏(仮名)】
社員の健康管理を専門とする産業医として、現在まで10社以上の企業での産業医に従事。うつ病で休職中のサラリーマンの復帰を支援するリワーク制度にも関わっている
【牟田武生氏】
NPO法人教育研究所所長。40年にわたり不登校、ひきこもりの臨床研究、相談、サポートを続けている。近著に『現代型うつ病予備軍「滅公奉私」な人々』(ワニブックス)
イラスト/サダ
― 「8割の会社員がうつ予備軍」の衝撃【5】 ―
『現代型うつ病予備軍「滅公奉私」な人々』 蔓延する「めんどくさい・かったるい症候群」の深刻 |
この特集の前回記事
ハッシュタグ