「仕事中はうつ、プライベートは元気」新型うつの理解されづらい全貌
「仕事中はうつ状態だがプライベートでは元気」という症状に悩む20~30代サラリーマンがここ数年増えている。これは非定型うつ(通称“新型うつ”)と呼ばれ、従来型のうつよりも軽度に分類されるが、“新型うつ”の増加は決して軽視できない社会問題だ。
◆プライベートはやる気満々!? 理解を得づらい うつの最新型
「休みの日は元気で、趣味にはやる気満々だったり、過食・過眠気味になったりと、従来のうつとはまったく違う症状。投薬よりもカウンセリングが重要なことや、自分ではなく他人を責める傾向があることから、“単なるワガママ病なのでは?”と思われることも多いのが厄介です」
とは、NPO法人教育研究所所長の牟田武生氏。ひきこもり、ニートの自立支援を行う、若者のうつのエキスパートである同氏は“新型うつ”増加の原因をこう分析する。
「生まれたときから不況しか知らず、『頑張ればそのぶん報われる』という価値観がそもそもないのが今の20~30代。『会社のため、世の中のために頑張って役に立ちたい=滅私奉公』よりも『頑張っても報われないなら、なるべく他者とかかわらず、楽をして生きたい=滅公奉私』という価値観で育たざるを得なかった時代背景が“新型うつ”を生んだ側面もある」
⇒【図】従来型うつと新型うつの違い https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=445736
また、“新型うつ”は若者特有の症状ではないこともアラフォーにとっては注意が必要だ。
「“新型うつ”の症状が注目され始めて10年弱。当時アラサーだったサラリーマンも今やアラフォー。バブル崩壊後に就職したアラフォーは、『終身雇用制度の崩壊』『年功序列の崩壊』と、“頑張れば報われる”価値観からの転換を迫られた“新型うつ”のはしりの世代なんです」(牟田氏)
多くの有名企業の産業医として、サラリーマンのうつ病の症例を見てきた榛原藤夫氏(仮名)も「今のアラフォーは従来型うつと“新型うつ”の過渡期。どちらの症状の患者もいるため、結果的に最もうつの患者が多い世代」と言う。
20代の部下の新型うつを心配しながら、自身も“新型うつ”になってもおかしくない背景を抱えている……。「最近の若いヤツは」なんて言っていても、明日は我が身ということも有りうるのだ!
【榛原藤夫氏(仮名)】
社員の健康管理を専門とする産業医として、現在まで10社以上の企業での産業医に従事。うつ病で休職中のサラリーマンの復帰を支援するリワーク制度にも関わっている
【牟田武生氏】
NPO法人教育研究所所長。40年にわたり不登校、ひきこもりの臨床研究、相談、サポートを続けている。近著に『現代型うつ病予備軍「滅公奉私」な人々』(ワニブックス)
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