日本が“自販機大国”になったワケ
自販機大国ニッポンでは街中のみならず、山奥の僻地でもそれに出合うことができる。自販機全体の売り上げは年間約5兆円、世界屈指の日本。その歴史は100年以上にもなる。
◆治安の良さにロボット好き……日本が自販機大国になったワケ
「本格普及は噴水型ジュース自販機や、コカ・コーラのビンの自販機が展開された1960年代前半から。’67年には缶飲料自販機が登場しました。機械からジュースを買えるようになったことは、当時の日本にとってエポックメイキングな出来事だったはず」
そう話すのは日本自動販売機工業会の黒崎貴氏。爆発的な普及の背景は複数の要因があるという。
「一つは’76年のホット&コールド機の登場です。同時にホット・コールドの飲料を併売できるこの自販機は日本独特のもの。年間の売り上げが安定したことで、普及台数は大きく伸びました。また’67年に新100円硬貨が大量流通したこと、その直後に国鉄が乗車券自販機の導入を本格化したことも、自販機が身近な存在になるのを手助けしたでしょうね」
文化の面でも、相性の良さが。
「治安の良さは大きいでしょうね。来日した欧米人は、『道端に金庫を置いているようなものじゃないか!』と、路上の自販機の多さに驚くそうですから。またマンガやアニメのロボットが正義の味方として描かれていたことも、自販機に親しみを持ちやすい理由かもしれません。欧米の作品のロボットは、悪役の場合が多いですから」
近年はコンビニの増加などもあり、自販機の普及台数は安定期に入ったが、「街中から自販機が消えることはない」と黒崎氏。
「自社の商品から自由にラインナップを決められて、新商品を好きな時期に投入できる自販機は、飲料メーカーには大事な販売ツール。また栄養補助食品を販売したり、駅構内で傘や本の販売を行ったりと、新しいタイプの自販機も増えてきています。ネットと連動すれば新たな活用法も生まれるはずです。例えば時間帯でセールを行うような、遊び心のある自販機も増えていってほしいですね」
【黒崎 貴氏】
自販機の製造事業者の業界団体として1963年に設立された一般社団法人日本自動販売機工業会・専務理事。著書に『自動販売機 世界に誇る普及と技術』(日本食糧新聞社)
取材・文/古澤誠一郎 鼠入昌史・廣野順子(オフィスチタン) 安田はつね(本誌) 撮影/菊竹 規
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