高尾山で水涸れなど環境に異変 圏央道トンネル開通の影響か!?
都心から1時間ほど、四季折々の豊かな自然に触れ合うことのできる高尾山。観光客は年々増加傾向にあり、年間約300万人が訪れるという。『ミシュランガイド』も三ツ星の観光地として紹介、外国人観光客も急増している。
2012年3月、この高尾山を貫通する「圏央道高尾山トンネル」が完成。「豊かな生態系を破壊する」として反対の声が大きかった事業だ。そして今年6月28日には高尾山インターチェンジと相模原相川インターチェンジ間が開通し、東名高速と中央高速が圏央道で繋がった。現在は何か変化が起きているのだろうか?
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=696679
1993年夏から高尾山の風景を撮り続けている写真家の広瀬敦司氏はこう語る。
「高尾山の北側斜面はイヌブナとブナなど落葉樹主体の温帯林、南側の斜面にはカシ類など常緑樹の暖帯林の森が広がっています。実は、高尾山は日本一植物種の多い山(約1300種)で、山ひとつでイギリス一国の植物種に匹敵します。タカオスミレやタカオヒゴダイなどの固有種も60種以上。昆虫は約5000種、野鳥は150種。世界的に見ても、驚くべき多様な生物種を誇る山なのです。
この貴重な森を支えてきたのは、豊かな地下水脈。そんな高尾山の水道(みずみち)が変わって環境が変われば、移動のできない植物は生きられない。その植物がいる環境で生きていた昆虫や、それらを餌としていた鳥や動物たちにも影響が出てくるかもしれません。しかし、これは今後きちっと調査をしてみなければ何とも言えません」
トンネル工事前の環境アセスでは「環境への影響は少ない」とのことだったが……。行政はその後トンネルの影響調査をしているのだろうか?
「トンネル工事中は、国交省が湧水量や地下水の水位を観測坑でチェックしていました。ところが『工事が終わったからもう関係ない』とばかりに観測坑を埋め、調査を打ち切ってしまったのです。本来は事業が与えた影響を行政が調査すべき。今後、8割が地下トンネルというリニア中央新幹線の計画もあります。トンネル工事によって地下水の流れがどう変わり、環境にどう影響が出たのか、できた後のデータこそ重要です。
登山客がたくさん来てくれて地元住民としては嬉しいですが、高尾山が世界的にも貴重な山であるということ、トンネルができた結果どんな状況にあるのかということについても、多くの人に関心を持ってほしい。そして、行政に調査をするよう働きかけてほしい。私たちも独自調査を進めていくつもりです。そのことが少しでも高尾山の生態系破壊を食い止め、今後のトンネル建設の際の環境影響評価に活かしていけるようになればと思っています」(坂田さん) <取材・文/北村土龍>
※「虔十の会」では、高尾山をはじめ環境についてのイベントを随時開催している。
【いきものカフェ】
高尾山はじめ、日本各地の生物多様性をめぐる状況を学びながら、10月に韓国で開催される生物多様性条約(COP12)に向けたメッセージを作るワークショップ。8/28(木)19:00~ 場所:カフェOHANA(三軒茶屋) http://www.cafe-ohana.com/
【落合公園ピースフェス】
人間だけのピースではなく、自然の中にあふれる多様な命とともに「ピース」であるにはどうすればいいのか? 虔十の会代表坂田昌子氏と秩父市議清野和彦氏のジョイントトーク。8/31(日)、トークは午後から。場所:新宿区落合公園 http://ochiai-fes.jp/
※広瀬敦司氏による高尾山の四季折々の風景写真は「PHOTO PRESS」(http://photopress.jp/gallery_hirose.html)にて閲覧可能。
「変化は少しずつ起きています」と語るのは環境NPO「虔十の会」代表の坂田昌子さん。高尾在住の坂田さんは、高尾山のエコツアーや環境イベントなどを主催している。
「まず見た目にハッキリとわかるのが、登山道からの景観。以前は四季折々の美しい山々をのぞむことができ、里山の集落が見えていました。現在は表高尾には高尾インターチェンジが、そして裏高尾には中央高速と圏央道を繋ぐ八王子ジャンクションができ、かつての風景は失われてしまいました。登山客を楽しませていた鳥や虫の声、風の音や木のざわめきなどが、今は自動車の排気音に変わっています」(坂田さん)
そのほかトンネルの影響は、地下水の変化としても徐々に表れてきているようだ。
「6号路の途中、琵琶滝近くの稲荷祠の湧水は、何度も水涸れをおこしています。このあたりは直下わずか20mくらいの地点をトンネルが通っているのです。また、高尾病院裏の登山道入り口にある妙音谷湧水も涸れているなど、常時水があったところの水量が少なくなっています」(坂田さん)
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