将棋の未来はどうなる!? 渡辺二冠「誰かがやられて、決着がつかないと」【電王戦FINAL記者発表会】
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「まあやっぱり(タイトルホルダーの)誰かがやられて、決着がつかないとっていうところはありますしね」(渡辺二冠)
PV冒頭に引用されていたこのコメントは、過去の週刊SPA!のインタビューでも「(電王戦に)出たいか出たくないかで言えば出たくない(笑)」と語っていた渡辺二冠らしい率直な発言だ。もちろん本来の希望としては、タイトルホルダーが登場して勝ってほしいという将棋ファンがほとんどではあるだろうが。
近年のコンピュータ将棋ソフトは極めて強くなっており、タイトルホルダーであっても勝つのは容易なことではない。ましてやタイトルホルダーには、将棋ファンだけでなく、将棋界全体やタイトル戦を主催するスポンサーへの責任や配慮がついてまわる。たとえ出場したかったとしても、本人の一存で決められることではないことは確かだ。
「私に聞かないでくださいって、いつも言っているんですけど(笑)」(羽生名人)
「出るということになれば万全の準備をして、確実に勝つという方向になると思うんですけど」(森内竜王)
かつて羽生名人は、故・米長邦雄永世棋聖に、コンピュータと対局するなら、ほかの公式戦を1年間すべて欠場して準備をする必要があるということを話していたという。実際のところ羽生名人が1年間欠場というのは実現不可能に近い無茶な話だが、そのくらいの準備と覚悟がなければ、タイトルホルダーとして電王戦に出場はできないということだ。しかし、PVのなかで羽生名人はこうも語っている。
「そういう声が大きければ、実現する方向に向かっていくことにもなりますし」(羽生名人)
今回発表された「将棋電王戦 FINAL」は、こうした状況を受けて、タイトルホルダーを除けば、これ以上はないメンツで臨むことになるという。
「20代から30代前半までの若手で、3回指せば2回は勝つ、通算勝率で6割5分程度の実力を持ち、さらにコンピュータとの対決に意欲がある棋士から人選していきたい」(谷川九段)
これまでの電王戦でコンピュータに勝利したのは、いずれもコンピュータに適正があり、研究に必要な時間と体力の余裕がある若手の強豪だったということで、これは非常に納得のいく話だ。おそらくこの通りの人選で5人そろえられれば、かなり良い結果を期待できるのではないか。
また逆に言えば、それでも負け越してしまったら、これまで通りの電王戦を続けることは難しく、タイトルホルダーが出場できる状況を作るやり方を模索していくしかないだろう。そのような意味での「FINAL」ということで、電王戦やその関連イベントがこれで打ち止めというわけではまったくないようだ。
会見では、ドワンゴの川上会長から、人間とコンピュータの強さを単純に比較することは難しく、むしろどのように比較すればよいのかを考えること自体が、本来の電王戦の趣旨であるという発言があった。たんなる勝ち負けだけではなく、強くなったコンピュータをひとつのきっかけとして、さまざまな方向から将棋の面白さを堪能できる対局が開催されることは、将棋ファンも望むところである。またコンピュータとの共存共栄は、電王戦の仕掛け人である故・米長永世棋聖が語っていたことでもある。
こうした意味で「電王戦タッグマッチ」は、電王戦とはまた違った、勝ち負けにこだわりすぎず、人間とコンピュータと将棋の関係を模索していく上で格好の棋戦となるだろう。昨年のタッグマッチでは、持ち時間が非常に短かったにもかかわらず極めてレベルの高い勝負ばかりで、将棋のさまざまな可能性をかいま見られたのも記憶に新しい。
→プロ棋士とコンピュータが組むとどうなった?【電王戦タッグマッチ観戦記】
https://nikkan-spa.jp/505147
当日の会見であわせて発表された「電王戦タッグマッチ 2014」は、9月20日、9月23日、10月12日の3日間で、Aブロック、Bブロック、決勝のトーナメント形式。前回の約3倍の規模で開催される。特に決勝が行われる10月12日の最終日には「将棋電王戦 FINAL」に出場する5人のプロ棋士も初お披露目される予定なので必見だ。
「電王戦タッグマッチ 2014」には、過去の電王戦に出場したプロ棋士やコンピュータ将棋ソフトはもちろん、現役最高齢の生ける伝説・加藤一二三九段をはじめ、高橋道雄九段、中村太地六段、西尾明六段、そしてA級棋士・久保利明九段も登場する。テレビでおなじみの有名棋士からアニメ『けいおん!』に出会って人生が変わってしまった棋士まで個性も実力もそろった顔ぶれで、超絶に面白い将棋が期待できるはずだ。
ちなみに、この日の会見の最後には、森下卓九段がメインキャラのスマホゲーム「モリシタ集め」のリリースも唐突に発表された。今年の年末にも何かしら電王戦関連のイベントが開催される予定があるようだが、これは電王戦で男を上げた森下九段の再登場もあるのだろうか。将棋とはまったく関係ないゲームなので、特に将棋は好きで見るけど指さない「見る将」の方は、ぜひポチポチやってみてはいかがだろうか。 <取材・文・撮影/坂本寛>
◆将棋電王戦に関する記者発表会2014 – ニコニコ生放送(タイムシフトで無料視聴可能)
http://live.nicovideo.jp/watch/lv187174538
◆「将棋電王戦FINAL」開催決定告知PV – ニコニコ動画:GINZA
http://www.nicovideo.jp/watch/1409277135
◆電王戦タッグマッチ2014 PV – ニコニコ動画:GINZA
http://www.nicovideo.jp/watch/1409275597
◆将棋電王戦 HUMAN VS COMPUTER | ニコニコ動画
http://ex.nicovideo.jp/denou/
◆モリシタ集め – niconico
http://sp.nicovideo.jp/event/denou
8月28日、東京・六本木のニコファーレにて「将棋電王戦に関する記者発表会2014」が開催され、ニコニコ生放送にて生中継された。
会見では、これまで5対5の団体戦として行われていた電王戦を来年2015年春開催の「将棋電王戦FINAL」で一区切り付け、いったん“最後”とすることが発表された。また昨年8月に開催され好評を博した「電王戦タッグマッチ」を来月9月20日から開催。2016年からは、この規模を拡大して高額な賞金のかかった大規模な棋戦として準備することも合わせて発表された。
電王戦は、プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが直接対決する棋戦として2012年1月にスタート。今年春までに3回が行われたが、現役プロ棋士の対戦成績は2勝7敗1引き分け(持将棋)と、大きく負け越し。棋戦そのものの存在意義まで問われかねない状況となっていた。
今回の会見開始前に放映された告知PV(ニコニコ動画にて視聴可能)では、日本将棋連盟会長の谷川浩司九段、株式会社ドワンゴの川上量生会長、そしてプロ棋士のトップに君臨するタイトルホルダーである羽生善治名人(王位・王座・棋聖も含む四冠王)、森内俊之竜王、渡辺明二冠(棋王・王将)が次々と登場。これからの電王戦のあり方や、期待されるタイトルホルダー登場の是非などについて、さまざまな意見が語られていた。
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