自分が使いたい電気は自分でつくる「オフグリッド」な生活とは?
大手電力会社が電気料金値上げや原発再稼働に邁進しているなか、「脱・大手電力会社」の動きが急速に進んでいるという。その理由は何なのか? 自治体、企業、一般家庭それぞれの「電力シフト」最前線をリポートした
<一般家庭>大手電力会社の電気を使わない、「オフグリッド」な生活とは!?
「節電も大事だけど、自分が使いたい電気は自分でつくればいいんです」
そう話すのは、’12年9月に東京の新宿から岡山県玉野市へ移住した鈴木みどりさんだ。原発事故の後、「東京から避難したほうがいいのではないか」と思いながらも、原発反対のデモに参加。1年くらいしてから、このままでは何も変わらないことを痛感し、自分の暮らしを変えることを決意する。
「電力会社に抵抗するという気持ちもありました」(鈴木さん)
東京生まれの東京育ち。家族や親戚がいざとなったら避難できるように、新幹線駅に近い場所で中古物件を購入。すぐにソーラー発電を導入し、電力会社の電気をなるべく使わない暮らしを始めた。
移住資金は、東京の持ち家を売って捻出。ソーラー発電システムや太陽熱温水器、薪ストーブも設置することができた。屋根の上には240Wのパネルが8枚あり、家の裏にあるスチール物置の中に、ゴルフカートの再生バッテリーが12個入っている。一般的なソーラー発電と異なり、電力会社に売電しないで、バッテリーに電気を蓄めて自分の家で使う仕組みだ。
「使っている家電は365リットルと110リットルの冷蔵庫、デスクトップPC、インターネット関係のルーターが24時間動いています。天気がいい日は発電量がバッテリーの容量を超えるので、ホームベーカリーでパンでも焼きます」(同)
中国電力との契約は継続しているものの、毎月の電気料は基本料の300円ほどしか払っていない。雨や曇りが続いてバッテリーの電気が足りなくなれば、電力会社に切り替えられるようになっている。
このシステムを全国に普及させ、施工しているのが「自給エネルギーチーム(自エネ組)」の中心人物、大塚尚幹さん。すでに29か所で独立型のソーラー発電を設置している。大塚さんは福島第一原発に近い川内村の「漠原人村(ばくげんじんむら)」というコミューンで電気・ガス・水道のない暮らしを営み、ソーラーパネルで電気を自給していたが、原発事故後に妻の実家のある岡山県に避難してきた。
「震災後、独立型ソーラー発電一式を持って南三陸に復興支援に行きました。ところが、屋根にたくさんソーラーパネルが載っているのに、バッテリーに蓄められないシステムなので、いざというときに使えなかったんです」(大塚さん)
⇒【vol.2】「廃棄バッテリー再生で安価なシステムが完成」に続く https://nikkan-spa.jp/756348
撮影/新井由己
― [脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【3】 ―
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