「新電力」に続々と切り替える地方自治体の動き
大手電力会社が電気料金値上げや原発再稼働に邁進しているなか、「脱・大手電力会社」の動きが急速に進んでいるという。その理由は何なのか? 自治体、企業、一般家庭それぞれの「電力シフト」最前線をリポートした
◆「新電力」に続々と切り替え!電力会社を設立する自治体も
東電など大手電力会社から、新規に電力事業に参入した「新電力」へと、電力の購入元を切り替える動きが自治体の間で広がっている。
昨年1月末、神奈川県が公共施設の9割を新電力に切り替えたと公表。全国市民オンブズマンが行っている各都道府県へのアンケートでも、購入総額は’10年の112億円から昨年は186億円に増加。各都道府県の新電力からの電力購入割合は、長野県(83.7%)や長崎県(56.1%)が高い。そのほか宮崎県、福岡県、大分県でも3~4割。九州では新電力への乗り換えが進んでいるようだ。自治体が新電力に乗り換えている大きな理由は経費削減。神奈川県は、新電力への乗り換えで電気代が年間で1億5000万円節減できたという。
売電先を替える自治体も増えている。東京都は、猪瀬直樹前知事の「脱東電」の指示の下、都内3か所の水力発電施設による電気の売電先を、東電から新電力「エフパワー」へと切り替えた。契約期間中だったため東電に違約金14億円を支払うこととなったが、それでも断行したのには理由があった。売電収入は年間約17億円で、それまでの7割増しになったのだ。
昨年9月、自治体として全国で初めて新電力を設立して注目を集めているのが、群馬県中之条町。原発事故後、原発に頼らない「電力の地産地消」のため自然エネルギーを推進するとして昨年6月に条例を制定。町と新電力「V-power」とが共同出資して一般財団法人「中之条電力」を立ち上げた。
現在、中之条町には3つのメガソーラー発電所があり、設備容量は全体で5000kW。年450万kWほどの町内の公共施設の電力需要に対し、600万~700万kW程度の発電が見込める。中之条電力は、町内の公共施設に直接売電し、その利益は中之条町の自然エネルギー推進のために使われる。
「東電から電気を買っていた頃に比べ、公共施設の電気代は7%減、年1000万円の経費を削減できました。また、中之条電力の年間2000万~3000万円ほどの利益は、個人宅の太陽光パネルへの補助金に活用されています」(中之条町エネルギー対策課)
その結果、個人宅に設置された太陽光パネルの合計は1000kWを超えた。現在、中之条町には全国からの視察が相次いでいる。
― [脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【1】 ―
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