中国が反日から“反イスラム国”に転向「今回だけはアメリカと手を組んで」
中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
過激派組織「イスラム国」の勢力拡大が続く一方、豪シドニーで発生したカフェ襲撃事件のように、イスラム国支持者によるテロ活動が各国で活発となっている。なかでも楽観できないのが、2000万人以上のイスラム教徒を抱える中国だ。
『鳳凰網』によれば、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への圧政を理由に、イスラム国は中国共産党を最優先の報復対象の一つとしているという。8月には中国のイスラム教徒に対し、自分たちに忠誠を尽くすよう呼びかける声明も出した。イスラム国は数年以内に同自治区を“解放”することを計画しているという。
ウイグル過激派とイスラム国で気になるニュースもあった。『環球時報』(12月15日付)によると、分離独立を主張するウイグル人組織「東トルキスタン・イスラム運動」のメンバー約300人がイスラム国に合流し、イラクやシリアでの戦闘に参加しているという。
こうした事情もあり、人民のイスラム国に対する関心はかなり高い。広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)は話す。
「ニュース番組では、現地特派員の最新リポートがひっきりなしに放映されている。日本メディアが行かない最前線での取材を続けていて、その正確さはさておき、欧米メディアの引用記事ばかりの日本マスコミと比べても情報量も多い。中国の特派員記者は契約であるケースが多く、何かあっても会社が責任を持たなくていいという事情もあるのでしょう。また、イスラムを敵視する世論を形成し、ウイグル政策を正当化しようという狙いもあるのかもしれませんね」
一方で、イスラム国に対する漠然とした不安も増大している。上海市在住の旅行会社勤務・向井典明さん(仮名・40歳)の話。
「1人の中東系の中年の男性が、空港のセキュリティチェックを何事もなく通過したのですが、居合わせた中国人老女が保安検査員に『荷物も全部開けてチェックしなさい、テロリストかもしれないよ!』と詰め寄っていました」
北京市在住の日本車メーカー勤務・内田義隆さん(仮名・44歳)によると、イスラム国への実力行使を訴える声もあるという。
「近所に、床屋談義好きの北京人が集まる飲み屋があるんですが、『日本を攻撃せよ』という酔っぱらいナショナリストとの合言葉が最近、『我が中国軍はイスラム国を壊滅せよ!』に変わった。彼らのような人種は、多くの確率で反米ですが、『今回ばかりはアメリカと手を組んで空爆に参加すべき』という声すらあります」
自国の反政府組織との結びつきがある以上、中国が強行手段に出る可能性はある。しかし、「自分の手は汚さないだろう」と予測するのは、中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏だ。
「すでに中国は、水面下でアメリカを中心としたイスラム国掃討作戦をかなり積極的に支持している。これまでイラクやシリアへの攻撃には反対の姿勢を示してきたのとはえらい違いで、それだけ危機感を持っていることが窺える。ただ、中央アジアのイスラム諸国のエネルギー利権との兼ね合いもあり、『反イスラム』というイメージがつかないよう慎重になっている」
中国も利権にかかればイメージを気にするということ!? <取材・文/奥窪優木>
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