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「現代は第三の幕末。自分の身は自分で守るしかない」城繁幸

城繁幸「自分の身は自分で守るしかない」 今回は少し大所高所から日本という国についてまとめておこうと思う。  筆者は、今の日本は“幕末”みたいなものだと考えている。といっても江戸幕府ではなく、戦国大名たちにひっくり返されたヨタヨタの室町幕府末期の、だ。農民出身の秀吉が天下を取ったことからもわかるように、既存の価値観が180度ひっくりかえった大転換期といっていい。  同時に、戦国時代は、日本人が史上もっとも個人として強く、自由であった時代でもある。東南アジアのあちこちに日本人町がつくられるほど日本人は海外に進出したし、武士も「七回は転職しないと武士じゃないよね」と言って気に入らない大名からさっさと転職するのが普通だった時代だ。 「島国根性」とか「武士は二君に仕えず」なんていう価値観は、ぜんぶその後の徳川幕府時代に後づけで作られたものだ。  とはいえ、そうした後づけの価値観は形を変えつつも、現代に脈々と受け継がれている。不祥事を起こした企業の役員が「会社は永遠です」と言って自殺するのなんて、まんま江戸時代の切腹そのもの。  でも、そうした古い価値観は、日本社会の急速な変化と共に崩れ去ろうとしている。そして、日本人は再び個人として強く自由に生きる時代がこようとしている。 ◆“格”ではなく“実力”。強さを求められる時代に  かつての武士たちが家柄や仕える大名を重視していたのと同様、戦後日本人も所属する企業や、そこに入るための学歴を重視してきた。でも、これからどんな大企業であっても、社員を定年まで抱えきれる保証はない。  むしろ大企業ほどグローバル競争に生き残るため、不要となった人材をどんどん排除し、その都度必要なプロフェッショナルを雇おうとするだろう。だったら、企業に必要とされるプロフェッショナルになればいい。  そして、最大の変化は、新しい社会では誰もが「強くあること」を求められるということだ。今までの日本は、弱者は弱者であるだけで居場所を与えられてきた。だから弱者は「自分は弱者」だと大声をあげればよかったし、なかには弱者じゃないのに弱者だと言い張るものもいた。  でも、恐らくは20年以内に、年金や生活保護といった社会保障制度は維持不可能となり、ほぼ消滅するだろう。あとは戦国時代同様、自分の身は自分で守るしかない。だから弱者は強者以上に強く、賢くなるしかないのだ。そういう時代がいいか悪いかは誰にもわからない。
城繁幸

城繁幸

 ただ、それをよしとして進んでいける人材たれということを、筆者からのメッセージとしたい。 <処方箋> ×弱者は「自分は弱者」だと大声をあげる ↓ ○弱者は強者以上に強く、賢くなれ 【城 繁幸/じょうしげゆき】 ’73年生まれ。人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表。『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社新書)が40万部突破のベストセラーに。最新刊『若者を殺すのは誰か?』(扶桑社)が発売中!
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