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駅舎内に串焼屋!? ローカル私鉄の生き残り戦略

 2015年3月15日の北陸新幹線金沢延伸開業により、JR信越本線・JR北陸本線の在来線のうち総延長290kmが第三セクター鉄道に移管された。これによって新たに生まれたのが「IRいしかわ鉄道」「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」の3社だ。  新幹線開業といえば、観光客誘致やビジネスにおける利便性向上など、そのメリットに目が向けられがちである。だが、在来線の「三セク化」は地方に厳しい現実を突きつけている。  人口減少が続く地方において、鉄道利用客の減少は避けられない。運賃収入を主とする地方鉄道の場合、主要利用客である高校生を中心とした若者の数が減り続ければ、打撃を受けるのは間違いない。そのため、ローカル鉄道は鉄道事業以外に新たな戦略を模索しなければならないのだ。 ◆第三セクター鉄道の新たな戦略とは 銀河鉄道線内の滝沢駅舎内に串焼屋 そんな中、鉄道事業以外の新たな活路を見出そうとする鉄道会社がある。岩手県盛岡市に本社を構えるIGRいわて銀河鉄道だ。東北新幹線の八戸駅延伸開業以来、全長82kmのいわて銀河鉄道線を運営している同社は、今月8日にいわて銀河鉄道線内の滝沢駅舎内に串焼屋をオープンさせた。  なぜローカル鉄道会社は串焼屋を開いたのか。同社広報担当の齋藤氏はその狙いを次のように語る。 「新幹線を使った長距離の利用客の誘致が可能なJRに対し、我々ローカル鉄道は『普段使い』をする地元のお客様にいかに鉄道を利用していただくかが鍵となります。沿線住民からのニーズも汲み入れた結果生まれたのが串焼屋でした」 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=878872 銀河鉄道線内の滝沢駅舎内に串焼屋 駅舎内に串焼屋をオープンさせたのには、ローカル鉄道ならではの事情があった。 「岩手県の人口については減り続ける見通しがあり、鉄道事業だけで収益をあげることが困難なのは明らかです。弊社の鉄道を利用してもらうために、まずは沿線住民の方に駅に来ていただき、駅の賑わいを取り戻し、沿線を活性化するためにオープンさせたのが串焼屋だったのです」(同氏)  今回、串焼屋を開業した滝沢駅付近には飲食店が少なく、競合店がなかったことも開業に至ったひとつの理由だという。 銀河鉄道線内の滝沢駅舎内に串焼屋「通勤のお客さまの列車待合の間の『立ち呑み』に加え、滝沢駅の付近には2つの大学が立地しており、一人暮らしをしている大学生も少なくなく、『宅飲み』の際に串焼をテイクアウトするお客さまもいるのでは、という狙いもありました。串焼は地元産の鶏肉や豚肉を使い、1本100円からとリーズナブルな料金のため、近隣に住む主婦のほかに高校生のテイクアウトのご利用も好評です」(同氏)  鉄道を利用してもらうために、まずは駅に来てもらう。そのために生まれたのが駅舎内の串焼屋だったのだ。  今後、東京などの一部地域を除いて人口減少がさらに加速する日本。IGRが始めた小さくも新たな取組みは、苦戦する地方鉄道の新たな戦略として、ひとつのモデルを提示していると言えるだろう。 <取材・文/日刊SPA!取材班 取材協力/IGRいわて銀河鉄道>
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