マルクスは廃れても、やはり経済(お金や富)が世の中を動かしてきた
マルクス経済学における下部構造
2018年でカール・マルクスが生まれて100年を迎える。マルクスの「経済的構造が土台」という主張から「下部構造は上部構造を規定する」という有名なマルクス経済学のテーゼが導かれ、マルクス主義は世界に多大なる影響を与えた。 戦後の日本でも、長らく知識人を中心に多くの人々に支持されたマルクス経済学だった。しかし、ソ連が崩壊し、共産主義国家の失敗が明らかになった1990年代から、マルクス経済学は退潮していった。 現在では人気がなくなったマルクス経済学だが、過去の歴史に限らず、実は現在においても、時代を動かす大きな要因として、マルクスのいう下部構造(経済)、つまり、お金(富の蓄積)の問題がかなりの比重を占めている。 日本では、安倍首相は政権発足時からデフレ経済からの回復による景気アップを最優先課題に据えているが、これなどは、結局、景気(経済)をよくしないと支持率も下がり、政権の求心力が保てないからで、まさに金(経済)の問題がベース(土台)となっている。歴史を「経済」の視点で眺めてみると
宇山卓栄著の『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社刊)は、世界史というものを経済(お金)を通してみていくとのコンセプトで、お金(富)も含めた経済事象が世の中を動かしてきた事例を解説する。 たとえば、歴史上の英雄であるカエサル(シーザー)でもナポレオオンでも、傑出した個人の才能だけでのし上がったのではなく、彼らのような圧倒的に能力のある人物が登場するのを経済社会が後押ししたと捉えている。 そこで、なぜ、カエサルやナポレオオンのような人物が活躍できることになったのか、その背景を分析していく。マルクスに倣えば、彼らの活躍(上部構造)は経済的背景(下部構造)の賜物といえよう。混迷する世界経済の指針
経済的事象から世界史をみていく本書は、現在の問題を考える際の参考になるだけでなく、日本や世界経済の行く末を考える際の手立てにもなる。 たとえば、現在の日本における巨額な累積債務問題や日銀が実施する極端な金利の低下なども、長い歴史のなかでは同様なことが何度も発生していたことがわかる。著者も「まえがき」で古代ローマの歴史家クルティウス・ルフスの言葉を引用しているように「歴史は繰り返す」のだ。 本書では、専門用語を使わず、基本的なことのみを扱っており、歴史の苦手な読者にとっても簡単に読み進められる。また、現在のビジネス用語を使うなど、歴史を新たな視点から見るなどの斬新さがある。 「世界史を勉強したいが知識が少ない」と感じているビジネスマンや、グローバルなビジネス環境に身を置く社会人にとっても、実践的に役立つ内容となっており、ぜひご一読いただきたい。(文/育鵬社編集部A)
『世界史は99%、経済でつくられる』 ビジネスにも役立つ世界史の必読書 |
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