貧困家庭を襲う“学習格差”の闇
ただそんな子供の夢の実現のためには、行政の支援が不可欠だ。
「授業料が無料なので、同じ偏差値なら年収のある家庭の子供も公立高校を志望する時代。経済的な理由でもともと公立しか入れない貧困家庭の子どもは、昔より過酷な競争にさらされています。また高校に合格しても、家計のためにアルバイトをする子が多く、結果、国公立大学に合格するための学力が身に付かず、進学を諦めるざるを得ないケースも少なくない」(同氏)
高校進学を諦めたり、中退した子の中には、生活が荒れてしまう子もいる。
「こういった貧困の連鎖は絶対に絶たねばなりません。子供のためだけに言うのではありません。貧困家庭に生まれても、きちんと教育を受け、大学を出て正社員になれば、その子は国にも社会にも大きな恩恵を与えるからです」
渡辺氏はひとり親世帯に支給される「児童扶養手当」の増額を国に求めて、昨年秋に他のNPO法人と連携して署名活動を行った。その成果もあってか、政府は今年度から第二子以降に支給される手当の増額が決定している。
“学習格差”問題の解決は、政府が掲げる「一億総活躍社会」にも合致するはず。公的支援のさらなる拡充を期待したい。
●渡辺由美子氏
NPO法人キッズドア理事長。大学卒業後、大手百貨店、出版社を経て、フリーランスのマーケティングプランナーとして活躍。 2000年から2001年にかけて、家族でイギリスに移住し、「社会全体で子どもを育てる」仕組みを肌で体験。2009年内閣府の認証を受け、特定非営利活動法人キッズドアを設立。日本の全ての子どもが夢と希望を持てる社会を目指し、活動を広げている。
<取材・文/岡野孝次> 1
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