なぜ人はブラック企業で“奴隷労働者”となってしまうのか?
転落に対するわたしたちの恐怖は、意識的であれ無意識的であれ、日常の至るところでじりじりと植えつけられているという。
「ホームレスになるとひどい目に遭うぞという光景を、行政がうまい具合に見せつけてくるわけですね。スカイツリーをつくっていたときには、墨田区ではゴミ拾いを生業にしている人がいるとわかっているのに、ゴミを漁ったら罰金をとるぞと言い始めました。いじめです。今だとオリンピックをやるからといって、明治公園に住んでいる人たちがいるとわかっているのに、公園は閉鎖します、直ちに出て行けと言っています。排除ですよね。
人とカネがたくさん集まるキレイな場所をつくるために、キタナイ連中をたたきだす。見せしめです。ホームレスに堕ちたらこうなるぞ、そんな恐怖を植えつけて、人の思考を奴隷化していく。そういった組織的な暴力が日常的にふるわれてきた。それで自分が奴隷であるとは思わずに、無意識的にそういう身振り手振りをしてしまうという怖さがある。それが、現代の再奴隷化なのです」
奴隷であることをわかっていても、ブラック企業で働き続けてしまう――現代の見えない「暴力」によって、わたしたちは日々働かされているのだ。
『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)で紀伊國屋じんぶん大賞2016第6位となる
<取材・文/神田桂一>
【栗原康】
1979年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科・博士後期課程満期退学。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。1
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