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なぜ人はブラック企業で“奴隷労働者”となってしまうのか?

 賃金労働者の4割が非正規になった――。昨年11月4日に厚生労働省が発表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、パートや派遣など、いわゆる「非正社員」の占める割合が、初めて全体の40%に達したのだ。

ブラック企業で“奴隷”労働者となってしまう人の特徴 1990年には20%だった(総務省「労働力調査」)ことを考えると、25年間で倍増しており、新卒の4割も同様に非正規となっている。今年3月に『村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』(岩波書店)を上梓した政治学者の栗原康氏は、こうした労働環境がブラック企業の“奴隷”を生み出してしまうと説明する。

「非正規で生きていて、少しでも働けない状況になると、死ぬぞという危機感がみんなどこかにあり、それが過度に煽られている。都内でアルバイトをしながらアパートで暮らしていて、身体を壊してしまったとします。バイトだと貯金ができていなくてアパートを追い出されてしまい、そうすると次の仕事も、住所がなくなったら見つけられなくなってホームレスになる。しかもホームレスになると、そんなわけないのに、イコール、死というイメージを抱いてしまう。だから、ずっとバイトだけでやっていくと、この仕事を失ったら終わるぞという恐怖がどこかにある。そこがうまく利用されてしまっていますよね」

 この仕事を失ったら、自分は死んでしまうのではないか――こうした危機感こそが、労働者を奴隷として働かせるためには都合のいいものとなる。

「人間の生存というもの、生殺与奪の権利が奪われてしまうと、主人に従わなければ死ぬ、殺されてしまう、そう思って何でも言うことを聞いてしまうんですよね。これってまさに奴隷に近いんです。労働力は、自分の身体を商品として、モノとして扱ってもいいということなんですけど、この起源は奴隷労働です。これが当たり前になると、生きていられるなら奴隷でもいい、少しくらい賃金がなくても、仕事があるだけまだマシだと考えてしまうんじゃないでしょうか」

 現代では、非正規社員だけではなくて、正社員も例外ではない。

「正社員でも、長期雇用の発想はもうないじゃないですか。20代でも30代でもいつリストラされるかわからない。だから基本的に、会社に文句は言えない。もし会社をクビになり、すぐに再就職先が見つからなかったら、そのあと非正規になるしかないわけです。いちど非正規になると、そこから正社員になれる確率は4人に1人です。だから、いちど失敗してしまったら非正規であり続けて、そして身体を壊したら死ぬんじゃないか。その恐怖って、正社員も持っているんですよね」

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じりじりと植えつけられている転落の恐怖

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