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いま世界中でマイケル・ジャクソンの音楽が熱烈に再評価される理由とは?

『Beat It』や『Thriller』じゃない

マイケル・ジャクソン 両氏は、「80年代から現在に至るまでマイケルの影響がなかった時代はない。彼の影を追わなかったアーティストが出なかった時代ってないんです」としたうえで、現在の“マイケルフィーバー”について以下のように説明する。 林:近年、ディスコタッチの曲が世界的に流行している流れがあります。2013年にダフト・パンクの『Get Lucky』が大ヒットしたことが大きいと思いますが、そういうディスコ・ブギーブームのなかで、そのルーツ的なものとしてマイケルの1979年のアルバム『Off The Wall』が特に注目を浴びているとみることができます。 荘氏:79年の『Off The Wall』、1982年の『Thriller』、そして1987年の『Bad』。これらはクインシー・ジョーンズがプロデュースに入った“クインシー3部作”と言われていますが、この3作の時代のマイケルはずば抜けて力があり、また時代の先をいく音楽をやってやろうという勢いがありました。なかでもやっぱり、『Off The Wall』ですね。  人類史上最も売れたアルバム『Thriller』よりも強い影響を残しているという『Off The Wall』。この2作の違いはどこにあるのだろうか? 荘:簡単にいえば、『Off The Wall』のほうがマニア好みというか、玄人受けがいいんです。 林氏:そうですね。R&Bファン界隈で“マイケルっぽい”という言葉が出るとき、その“ぽい”で頭に浮かぶ曲って、『Thriller』や『Beat It』よりも、『Off The Wall』に収録されている『Don’t Stop ’Til You Get Enough』とか『Rock With You』とか、あと特に近年の再評価が著しい『I Can’t Help It』とかなんですよ。 荘氏:アーティストでも、マイケルのオマージュをやろうとするとこれら『Off The Wall』の曲の世界観に近づけようとするアーティストが多い印象です。  マイケル・ジャクソンの代表曲と聞いて誰もが頭に思い浮かべる『Thriller』や『Beat It』や『Bad』。  両氏は、これらの曲は当時のミュージックビデオブームへの訴求が強く、あくまで音楽的にみれば、『Off The Wall』収録曲やアルバム『Thriller』収録の『The Lady In My Life』、『P.Y.T.(Pretty Young Thing)』、『Human Nature』といった楽曲などが現在の“マイケルフィーバー”で注目を浴びていると分析する。
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生前に音楽的評価が語られにくかった理由
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新R&B教室 マイケル・ジャクソンでつながる ソウル/ブギー・ディスク・ガイド1995-2016 (SPACE SHOWER BOOks)

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