遅いのは無制限プランだけ!? 抜群の通信安定性を誇った「b-mobile」
通信速度の遅さがよく指摘されるが、実は高速! 利用者が少ないから!?
格安SIMの多くは、ドコモの通信網を借りてサービスの運用を行っている。ただ、通信品質に関しては、業者によって少なからず差が出るようだ。
「ドコモから借りている通信帯域の幅と、MVNOが独自に整備しているインターネット接続設備の違いによって、通信品質に差が出ることがあります。特に高速データ通信の容量無制限プランなどは、アクセスが集中し、通信速度が落ち込んでしまうことが珍しくありません」(佐野氏)
そこで本誌では新宿の地下鉄ホームや都庁の展望フロアで、速度パフォーマンスに差があるのか専用アプリ「Speedtest.net」で計測テストを実施。MVNO主要10社を対象に、平日夕方という回線が最も混雑しそうな時間帯を選んで、検証を行った。
⇒【調査結果の詳細】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1099618
格安SIMの主要10社のベンチマークテストの結果
1位となったのはb-mobile。運営会社の日本通信は、個人より法人契約に力を入れており、ユーザー調査でも「高速データ通信の容量無制限プランは、速度が遅い」といった声があったため、この結果は予想外ではあったが、今回試した通常の5段階定額プランでは、他社より頭ひとつ抜きんでた速度パフォーマンスを記録。
下り速度ではmineoやDTIも健闘したが、上りも安定した速度パフォーマンスを示したのはb-mobileだけだった。また、通信速度だけでなく、テストではときどき計測が中断することもあったなか、b-mobileは一度も途切れることがなかったのも特徴。地下深くにある都営大江戸線ホームでのテストでも、b-mobileだけは一度も途切れることがなかった。
一方で、低料金が魅力のDMM mobileやFREETELはユーザー数の多さも影響してか、今回の検証では低調な結果となった。楽天モバイルは昨年秋から新APNの設定などネットワーク整備が進められているようだが、今回の検証では平凡な結果となった。
これから通信安定性でSIMを選ぶなら、過去の評価を覆す勢いのb-mobileが有力候補となりそうだ。
データ通信だけでなく電話もよく使うなら「楽天モバイル」がお得
かけ放題サービスもさることながら、様々な特典も魅力的
通話料の完全な定額プランがない格安SIMは、通話時間が少ない人ほど料金を抑えやすい。しかし、なかには通話もしっかり利用したいという人もいるだろう。そんな人にオススメなのが、楽天モバイルだ。
「専用のアプリを使う必要があるのと、1回につき5分間という制限はありますが、月額850円で何度でも電話ができるサービスがあります。電話もよく使うユーザーにとって、非常に魅力的な内容でしょう。また5分を超えた場合でも、通常の半額となる10円/30秒で電話ができるので安心です」(佐野氏)
格安SIMの主要10社の「番号はそのままで通話料が半額になる」専用トークアプリの有無(プレフィックス型通話)
楽天モバイル同様に、専用アプリを使って通話料半額にする「プレフィックス型通話」アプリは、IIJmioやU-mobileなど他社も多く提供している。また、1回につき5分までの通話が無料になるかけ放題サービスはFREETELも月額840円で展開している。
格安SIMの主要10社のかけ放題サービスの有無
ただし、楽天モバイルは月々の支払100円につき、楽天スーパーポイントが1ポイント貯まるほか、楽天モバイル優遇など、SIMを利用することで受けられる楽天市場での特典の多さが特徴。通話を重視したい人はもちろんのこと、楽天市場ユーザーなら迷わずオススメできる格安SIMといえるだろう。
それと、選択肢として覚えておきたいのが、BIGLOBEが展開している月額650円で最大60分の通話が無料となるオプション「通話パック60」だ。「1ヵ月の通話時間が約70分以内」という人であれば、楽天モバイルやFREETELのかけ放題サービスより、BIGLOBEの方が安い。ただ、月に70分以上電話を利用するなら、5分以内の通話が無料になる楽天モバイルやFREETELが有利といえる。
キャリアと楽天モバイルの「かけ放題」料金の比較 ※1 2016年2月時点での料金から算出
今夏にはLINEが参入するなど、ますます競争がヒートアップしそうな格安SIM業界。ただ、キャリアを長年使っていたユーザーが、いきなり格安SIMへ乗り換えるのは、少しばかりハードルが高い。とくにこだわりがないなら、まずは受付カウンターもあり、サポートサービスが充実しているIIJmioあたりを優先的に検討してみてはいかがだろうか? <文・図版/田中雅大>
【石川温氏】
ITジャーナリスト。「日経トレンディ」編集記者を経て、ジャーナリストとして独立。ケータイ業界を中心に幅広く活躍
【法林岳之氏】
ITジャーナリスト。パソコンや携帯電話の評価や解説を手がけるフリーランスジャーナリスト。「できるシリーズ」など著書多数
【佐野正弘氏】
モバイルジャーナリスト。最新端末から業界事情にいたるまで、スマホに関するあらゆる情報に精通。海外市場の取材も精力的に行う