「人としてダメな人」を描く作品に出たい
――『ヒメアノ~ル』では殺す、盗む、犯すという役柄ですが、躊躇はありませんでしたか?
森田:まったくなかったです。むしろ好きなテイストの作品に参加できるという幸せな思いはありました。
――好きなテイストというのは?
森田:もともと“人としてダメな人”を描いている作品が好きなんです。舞台の『鉈切り丸』では人斬り役をさんざんやって、流血するような場面にも免疫ありましたし。
――劇中の「森田」の感情を理解するのは難しいと思うんですが、お二人はどう話し合ったんでしょう?
吉田:だいたい役者と話さないんだよね。特に役作りに関しては。脚本も自分が書いてるから俺から話すとみんなそれをやっちゃうでしょ。森田くんが先に決めたがるタイプじゃなくてよかった。まず確認したよね、「決めたがりの人ですか?」って。
森田:(笑)。準備といえば「森田」はこんな喋り方だろうというのをある程度イメージしたぐらい。あとは現場で監督がノッてましたからね。ノッてる人についていこうみたいな。
吉田:今回は確かにノッてた(笑)。
森田:現場の空気もギスギスすることもなくあったかい感じでしたし。
吉田:あったかい感じで人を血まみれにする現場。「今日も2人殺やっちゃうぞ~」とか言ってたよね。
――でも殺人鬼を演じる上で何を基準にしたんでしょうか? 自分の中の怒りなのか、100%想像なのか。
森田:そこはあえて理由は持たないと決めていました。「森田」に関して言えば、高校時代にイジメっ子を殺した後はおそらく感情なんてない。すべて自傷行為だと思ってましたし。
――陰惨なシーンを演じるのがキツいと感じたことはありましたか?
森田:はい。撮影の途中になってからちょっとありました。
吉田:一時期、苛酷な暴力シーンが続いたんだよね。殺されるほうの役者さんも役に入り込むタイプの人がわりと多くて、そういう場面が続くとさすがにしんどいよね。
森田:僕自身は「森田」をわりと客観的に見ていて、演じていてもそんなに落ち込むことはないんです。ただ山田(真歩)さんを殴るシーンなんかは「早く謝りたい!」って思ってた。その日に限ってカメラをずっと回してたからなかなか謝れなくて。
※このインタビューは5/24発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【森田剛】
’79年、埼玉県生まれ。’95年にV6のメンバーとしてデビュー。俳優としても活躍し、’11年に主演した宮本亜門演出の舞台『金閣寺』はNYでも上演。8月には主演舞台『ビニールの城』の公演がある。V6として、ニューシングル「
beautiful world」が6月8日発売
【吉田恵輔】
’75年、埼玉県生まれ。自主映画を撮る傍ら、塚本晋也監督の現場で照明を担当。’06年に『机のなかみ』で長編劇映画デビューを果たし、以降ダメ人間への共感に満ちた諸作でカルト人気を得る。’14年には人気コミックの映画化『銀の匙 Silver Spoon』を発表した
●映画『ヒメアノ~ル』 http://www.himeanole-movie.com/
取材・文/村山 章 撮影/スギゾー スタイリング/三島和也(Tatanca) ヘアメイク/惣門亜希子
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『ヒメアノ~ル(1)』
ショボくれた青春を送っていたけど、なんだかちょっと危ない気がする!
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