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山口組総本部が異例のコメント発表――「ヤクザジャーナリズム」の功罪

 分裂から10か月、射殺事件まで勃発した山口組分裂騒動の緊迫はピークに達している。報復の連鎖も懸念されるなか、“当事者”たる山口組総本部が本誌取材に重い口を開いた。 ヤクザジャーナリズム

矛先は暴力団報道の第一人者に――“菱のカーテン”の知られざる内幕

 岡山で神戸山口組系池田組のナンバー2が射殺され、実行犯として六代目山口組の弘道会から組員が出頭した。銃器による殺人事件が起きたことで、捜査当局は両団体の特定抗争指定を急ぐと見られる。  これまで、和平の道がなかったわけではない。射殺事件が起きる前に両団体の幹部同士が顔を合わせて交渉する席が設けられたという話が漏れ伝わった。六代目山口組側からは高木康男・清水一家総長、神戸山口組からは織田絆誠・若頭代行が出席し、落としどころを話し合ったとされる。この会談について、二次団体幹部が語る。 「山健組の若頭補佐の1人が清水一家の重鎮に『高木総長にご相談があります』と連絡を入れたのが発端だった。『織田と会っていただけないか』との申し出に、全権を委任された立場で来るなら話を聞こう、と会ったのは事実。ただし、いざ会ってみると何の権限も持たず、『どうすれば(山口組に)戻れますか』と聞いてくる。六代目山口組としては『ポツダム宣言なら受け入れる。若い者は救えても絶縁者は救えるわけがないだろ』と蹴って終わった」  噂は瞬く間に広まった。ただし、巷に流布されたのは、極端に歪曲されたものだという。 「そんな経緯が織田にかかると、『親分(井上邦雄・神戸山口組組長)の若頭での復帰案を司六代目が呑み、総裁職に退くことになった。ところが獄中にいる高山若頭が拒絶して破談になった』というフィクションにすり替わる。さも事実であるかのように吹聴するので、始末に悪い」  神戸山口組サイドのキーマンとして挙げられる織田若頭代行だが、二次団体幹部の心証は極めて悪い。 「自分の経歴や武勇伝をネットに書き込ませ、神戸山口組系のまとめサイトも存在するほどネットの情報戦に力を注いでいる。内容はショーンKが可愛く見えるほどの詐称っぷりですよ。岡山の件で彼らがやった返し(報復)を知っていますか? 石で車を壊し、糞尿を組事務所に送りつけただけです。ヤクザ者のすることではない」  憤る彼の口からは、暴力団報道の第一人者とも言うべき著名ジャーナリストの名前も挙がった。溝口敦氏である。 『荒ぶる獅子-山口組4代目竹中正久の生涯』(徳間書店)など、山口組関連の著作も多い溝口氏もまた“印象操作”の一翼を担っていると語るのだ。 「分裂以降、『週刊現代』や『日刊ゲンダイ』で彼が書いている内容は非常に危険です。弘道会が絶対的な悪で、神戸山口組に勢いがある。こうした主張をたびたび繰り返しているが、記事には明確な事実誤認が含まれる。例えば昨年の12月に六代目山口組の新人事として『竹内照明の本部長就任、藤井英治が統括委員長に就任。これでトップ4役を独占するフォーカードを作り上げた。露骨きわまる弘道会一色人事である』と、こう書いている。そうなってますか? なっていないでしょう。こうしたデタラメな記事で対立を煽れば余計な喧嘩も起きるし、血も流れる」  幹部の主張は、ヤクザジャーナリズムの功罪を問うている。
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ヤクザジャーナリズムにおける“公平性”とは?
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荒ぶる獅子―山口組4代目竹中正久の生涯

山口組四代目、竹中正久の激しい生きざまを綿密な取材と構成で描いた力作。

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