何げない夏の風景を煌めくものに変える「never young beach」の音楽の魅力
never young beach、通称ネバヤン。夏や海をイメージさせるその名にふさわしいトロピカルなサイケデリック・フォーク・ロックを鳴らし、結成から約2年で東京インディーシーンの顔とも言える程に高い人気を獲得しているバンドだ。
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2015年にリリースされ、ロングセラーとなった1stアルバム『YASHINOKI HOUSE』は、どこか懐かしいメロディと柔らかい陽光のようなフィーリングがエバーグリーンな輝きを放つ傑作で、はっぴいえんどや細野晴臣らの音楽と比較する向きもあった。そして、去る6月にセカンド・アルバム『fam fam』をリリースしたばかりの彼らが、初となるワンマンライブを7月に渋谷WWWで開催した。
オープニングを飾ったのは、『fam fam』から「なんもない日」。サーフ・ロック風のギターが心地よいナンバーだ。ここで驚かされたのが、ドラムとベースのリズム隊が生み出すグルーヴのタイトさ。南国的な横ノリを出しつつ、会場のボルテージを一気に引き上げるロッキンな縦ノリもそこにはあった。
終盤のMCで、ベースの巽啓吾が「結成して3日後に最初のライブで、その時がベースを始めて3日目だった」と語っており、なおのこと驚かされたが、つまりはそれだけライブの場数を踏み、バンド全体の経験値が上がっていたということ。ユルいビートを間延びせずに聴かせるアンサンブルに否応なく期待が高まる。
『fam fam』から「Motel」、高田渡のカバーである「自転車に乗って」、更に『YASHINOKI HOUSE』から「ちょっと待ってよ」と「どんな感じ?」が続く。「自転車に乗って」はファンクネスを感じさせるミニマルなリフがハマった見事なカバーで、アルバムでもオリジナル楽曲のように溶け込んでいたが、ステージの上でもしっかりと“ネバヤンのサウンド”になっていた。
MCを挟み、ヴォーカル/ギターの安部勇磨が、当日の昼過ぎまで雨天だったことにかけて“雨の降った日に相応しい曲を”と始めたのが「雨が降れば」。安部が影響を公言するアメリカのアシッド・フォーク・シンガー、デヴェンドラ・バンハートの作品のように、ゆったりとした余白の多いアレンジとメロディがすっと胸に入ってくる。
かと思えば、アルバム表題曲「fam fam」では、ザ・ストロークスの名曲「ハード・トゥ・エクスプレイン」や「ラスト・ナイト」さながらのガレージ・ロックをモータウン風のビートに乗せ、フロアを踊らせてみたりもする。どの楽曲もよく練られていて、それでいて何も考えずに聴ける耳触りのよさがある。シーンの中でネバヤンが突出しているのは、このあたりのセンスだと感じる。
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