“大麻王子”が語る大麻のいま「日本の老人こそハッパを吸うべきだ」
――日本では今ファーストレディが、古来から続く、麻の油、布、紙といった文化を啓蒙しています。
マーク:そもそも紀元前1万年から2000年ほど前まで、カンナビスは農業のかたちで人類が初めて育てた植物だった。理由は、それがあまりに有益だから。種は潰して食料になるし、オイルも採れる。葉っぱ部分は怪我の治療にも使われた。また当時は、住居の中で焚火にカンナビスを入れ、その煙で幻覚を見て、それが神との交信に使われた。世界の各地で、何らかの大きな力を手にする目的で使用されていた。
カンナビスは世界中で生えていた。原種とされる「サティバ」という名称はラテン語で「古」を意味する。私たちは共に、お互いを必要としながら進化してきたんだ。世界のどこでも、人類のいるところにカンナビスはある。それは最も人類に貢献してくれる植物であり、その万能の効能で私たちを魅惑し、栽培をさせてきた。
近代では、長い間アムステルダムだけがユニークで誰も真似しなかったが、今は違う。カリフォルニア、アラスカ、ワシントン、オレゴンなどの州ですでに合法で、大資本が流入している。それを知った他地域の行政は、今後も無用な麻薬戦争を続けてビジネスに参入しないことを、良しとはできないはずだ。
今年中に、さらに合法の地域、国は増える。チリは合法化するし、ウルグアイはすでに合法、コロンビアでも医療大麻は合法で、メキシコの最高裁は「合法化せよ」との判決を出し、カナダも時間の問題だ。
――現在の合法化に向けた世界の潮流を見て、感想は?
マーク:とても満足している。私たちは劇的に前進している。とはいえ何ごとも完璧ではない。
長い視野で「カンナビス合法化」といって、私の定義では誰も処分、逮捕されない社会をつくる。そして、誰もが自分で栽培できる社会がゴールだ。
――ここは、世界的なカンナビス解放記念日「420」の発祥の地です。
マーク:「420」は22年前に始めて、今や世界中で開催されている。それはSNSや動画の力で世界に広がった。そして、刺激された人々がさらに「オレたちもやりたい」と、それぞれの地元、コミュニティで、同じことを始めるんだ。
私は常に、「あらゆる方法を駆使すべきだ」と思ってきた。政治団体を組織し、種子の販売で稼いだ資金はそのためにも使った。逮捕を恐れず、信念に基づき行動し、前向きに裁判に臨むことを繰り返してきた。そうやって同じ考えを持つ仲間たちの心情を代表し、世に問うてきたんだ。
また、キャッチコピーは重要だ。
「Overgrow the Government(政府を緑で覆い尽くせ)」、「Plant the Seeds of Freedom(自由の種を栽培しよう)」。市民運動には、それに沿う優れたスローガンが必須だ。これらは人々の心を掴み、力強いキャンペーンの原動力となり、私のキャリアでも、特に成功した作戦と言えると思う。
その間私は34のカナダとアメリカの刑務所を経験したが、それをもってしても、燃えるような正義のための愛と情熱は絶えることがなかった。
カンナビスによって過去45年間、200万のカナダ人、2300万ものアメリカ人が逮捕された。世界では約4500万人もの人間が逮捕されてきて、もちろんそこには日本の人々も含まれる。
これ以上に筋の通らない現在進行形の不正義、しかも、ここまで根拠のないものを、私は他に知らない。カンナビスには逮捕されるべきただ一つの理由もなく、それどころか100以上の、私たち全員が愛すべき理由があるんだ。
【マーク・エメリー氏】
’58年、カナダ・オンタリオ州生まれ。高校中退後の’75年から書籍販売に携わり、’79年より政治活動に参加。大麻種子販売の罪での逮捕を経て、BCマリファナ党党首に。大麻解放運動の他、音楽等表現の自由、検閲問題についての活動も。現在、居住するバンクーバーで大麻解放施設を運営する
<取材・文・撮影/克田乃武>
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