フーゾク界の栄枯盛衰を知る男・山本晋也監督「石原慎太郎がカーテンの陰に僕を呼んで風俗店の話を…」
――エロに対する羞恥心は今も昔も同じですね
山本:そうなんですよ。今でも電車に乗ったりすると中年夫婦の旦那だけが僕に気付いて「昔、見てましたよ」みたいな目つきを送ってきたりする。そのときは「この夫婦、性生活はもうないのかもしれないけど、旦那の方はまだまだ精神的には健康だな」と思ったね。
つい最近も銀座を歩いてたら、道路の向かい側のクラブから社長らしき白髪のご老人が出てきて、10人くらいの取り巻きに見送られていた。そしたら、そのご老人が僕の顔を見るなり、駆け寄ってきて何も言わずにニコッとして握手を求めてきたの。僕に気づいた人たちって、決して話しかけたり、サインを求めたりはしないんですよね。
――『トゥナイト』『トゥナイト2』では山本監督の風俗リポートが人気のコーナーでしたが、番組が終了した現在でも性風俗店の取材をしているようですね
⇒【写真】はコチラ(カントク自ら体を張った風俗リポート)https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1248181
山本:最近だとハプニングバーや歌舞伎町の「ロボットデリヘル」、鶯谷の「デッドボール」なんかに行きました。なかでも鶯谷デッドボールはすごかった。デブ、ブス、ババアの、いわゆる地雷と呼ばれる女性ばかりを集めてそれをウリにしている。
楽屋に行って女性たちと話したけど、正直「よくこんな人と……」と思いましたね。こういう女性相手だと、コンプレックスを持っている男性も気にせずコトに及べるわけですよね。経営者の目の付け所に感心しました。
都知事で思い出しましたけど、’80年代、運輸大臣だった石原慎太郎が僕の友達の立川談志を通じて会いたいと言ってきたことがあった。何かのパーティーに呼ばれて行くと石原慎太郎がカーテンの陰に僕を呼んで、「監督さん、女の子と棺桶に入る風俗あったよね」って言うわけ。
トゥナイトでも取り上げたことのある歌舞伎町の「占いの館」ってお店だったので、「あるよ。まさか慎太郎さん行ったの?」って僕、思わず聞いちゃったよ。要するに歌舞伎町はどんなところかって知るためにリサーチしてたんですね。偉いなと思いましたよ。
――30年間以上にわたり、世情を観察してきた山本監督ですが、現代人に対して思うことはありますか?
山本:世の中をきれいにしようとしすぎだと思いますね。子供のいじめの理由に「臭いから」っていうのがあるでしょう。僕の小学生時代にはそんなことはなかったですよ。昭和の時代は、体臭があるのが当たり前だった。友達の体臭が嗅ぎ分けられたくらいです。自分の体に消臭スプレーをかけてみたり、朝シャンをしてみたり、僕からしてみれば本当に馬鹿らしい。
「水清ければ魚棲まず」と言いますけど、何でもかんでも清潔にしていこうという流れが人と人との繋がりを薄っぺらいものにしていると思いますね。
――テレビの世界でも、お色気番組に対する規制は厳しくなってきてますね
山本:テレビはわいせつ物だけ取り締まるけど、羞恥嫌悪の情を抱くという意味ではアメリカの大統領選の候補者同士のやり合いなんかも一緒じゃないですか。今回の『甦るトゥナイト2』をきっかけに、どんどん深夜番組らしい深夜番組をやっていってほしいなと思いますね。
思い返せば、前回の東京オリンピックの時も開催の少し前にピンク映画が生まれた。そして’20年の東京オリンピックの前に『甦るトゥナイト2』が復活した。今、甦らせなきゃいけないと思うんです。実際、今回テレ朝が口火を切れば他局もついてくると僕は思います。だからこの復活は必然だと思ってますね。
<取材・文/鴨居理子 撮影/林紘輝(本誌)>
1
2
【甦るトゥナイト2】
日時◆初回は12月25日(日)23~25時放映。全3回を予定
出演◆山本晋也、石川次郎、乱一世、高尾晶子
内容◆初回は当時の出演者たちをスタジオに迎え、当時大人気だったラブホテル企画「ある愛のかたち」シリーズの秘蔵映像を放映
テレ朝チャンネル2http://www.tv-asahi.co.jp/ch/contents/variety/0134/
『風俗という病い』 半世紀、夜の街を歩き続けた著者が「風俗大国」ニッポンのエロを丹念にリポート |
ハッシュタグ