更新日:2022年08月19日 10:11
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自衛隊員は“マイ換気扇”を持参して引越しをする【自衛隊の知られざる貧乏生活】

 こういう古典的な自衛官の官舎は古過ぎるため、地方では敬遠されています。駐屯地の近くに家賃の安い賃貸物件があるので官舎の利用度が低いのです。しかし、都心ではそうもいかず、官舎の入居率がほぼ100%になります。鳩がいてもネズミがいても都内の官舎なら仕方なく入居する人が多かったのですが、実はその状態が変わりつつあります。  東京都の自衛官のなかでとくに防衛省、市ヶ谷には1万人余りの自衛官や官僚、事務官が在籍しています。彼らの多くは外国による侵略や巨大地震などの大きな災害時には市ヶ谷の防衛省に徒歩で直ちに出勤できる2km以内に居住を義務づけられている緊急参集要員です。でも、その人員すべてに東京の官舎はなく、実際には「いざ」と言うときに遠方に住んでいる人たちが沢山いるので、非常時に市ヶ谷にどれだけ参集できるのかはまさに「謎」。神のみぞ知る状態でしたが、さらに悪化するようなのです。  元蓮舫行政刷新大臣の事業仕分けもあり無駄と判断した公務員住宅が、平成23年度12月財務省の公務員の官舎削減計画となり、計画通りに粛々と進められ自衛隊の官舎も削減されています。都心の自衛官はさらに都心には住めなくなります。  ネットで自衛官の不満の声をきくと、どうやら、防衛省は自衛官に対して、「この官舎は削減対象だ。家族保護(福利厚生)の目的での入居は、今後は多くの官舎でできなくなる」と告知しているとの話があります。  交通インフラが寸断されたら、すぐに指揮命令してもその下で働く参謀や隊員が遠方に住んでいるので出勤できない。怖いなぁ。  ガスコンロを数種類、網戸や換気扇を常に持ち歩いての官舎へのお引越し風景はもう間もなく消えそうです。新妻が泣くシーンは減りそうですが、いざということきに自衛官がいない東京というのも「なんだかなぁ」と思ってしまいます。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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