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遺体を砕いて川に捨て…被害者はヤクザまで――かつての親分が語る、愛犬家に惨殺された「子分たちへの鎮魂歌」

「最初から関根が怪しいと思った。直感のほうが正しいこともある」

 なぜ、遠藤さんは殺害されたのか。 「関根は経営していたペットショップの客との金銭トラブルを多く抱えており、遠藤はその相談を受けていたと聞いていました。そうしたことで揉めたのかもしれません。関根はカタギなので、遠藤も油断していたのかとも思います」  だが、遠藤さんが行方不明になった時に、髙田氏は真っ先に関根を疑った。 「老子の言葉に『不出戸知天下』(戸を出でずして天下を知る)とありますが、外に出ていろいろな情報に振り回されないほうが、真実がわかることもあるのです」  直感でひらめいた「関根による犯行」を裏付けるために、髙田氏は関根と側近との電話を盗聴し、地元で有名な「拝み屋」に鑑定を依頼するなどして独自に調査を続けた。 「関根を自宅に呼びつけて、別室で待たせておいて拝み屋に話を聞いたんです。私はインチキだとわかっていましたが、関根は非常にビビっていました。簡単に人を殺すくせに、インチキな霊媒師のような者には弱い男なのです。その怖がり方を見ても、やはり関根が犯人だと確信しました」  その後に、組員たちと「関根が逮捕される前にトって(殺して)しまおう」と謀議を繰り返すことになるが、既に報道陣が関根の店や自宅に押しかけ、警察も警戒態勢に入っていた。 「いま問題になっている『共謀罪』があったら大変でしたけど(笑)、最終的には捜査に協力する形になりました。本書でもふれていますが、私が初代を務めた髙田組と髙田一家は、人を殺さないことを徹底し、子分にも指を詰めさせたこともありません。遠藤の仇を取れなかったことは今でも悔やまれますし、渡世から見れば情けないことかもしれません。いろいろな評価をされていますが、結果としてはよかったのだと思います」  組長としての責任の取り方も考えた。 「もちろん私がしっかりしていなければなりません。でも、ヤクザは人を殺すことの恐ろしさをよくわかっていますから、実はめったに殺すことはないんですよ。最近の殺人事件も、ほとんどが親族や顔見知りによるものですね」
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「死刑執行の前にすべてを話してほしい」
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仁義の報復 元ヤクザの親分が語る埼玉愛犬家殺人事件の真実

元組長自らがこの経緯のすべてを明らかにし、知られざる事件のさらなる深き闇にも肉迫した、前代未聞の犯罪ドキュメント

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