更新日:2022年08月25日 09:51
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ユウキロック×中川家――オンバト、ボキャブラ勢とは違う“NSC同期”の絆

「M-1グランプリ」は得体の知れない賞レースだった

剛:いまでも覚えているのが最初の「M-1」(2001年)のとき、決勝に残ったやんか。準決勝でアメリカザリガニかハリガネロックか……という状況でハリガネが勝った。俺、思わずバンザイしたもん。「一緒にココまできたハリガネとやれる」ってのが嬉しくて。本当はそんな態度したらアカンのだけどね。 ユウキロックと中川家06ユウキ:一応、戦いやからな。 礼ニ:俺は最初からハリガネがくると思っていたよ。アメザリもウケていたけど、ハリガネのほうがネタの中身が濃かったからね。 剛:ハリガネは荒くれたネタやったからな。俺らは収まった、という感じだったやん(笑)。 ユウキ:いや、逆よ。俺らのほうが収まってたよ。 礼ニ:いやいや、お前は普段の生活のほうが収まってたよ! 「センキュー」とか言ってハリガネ“ロック”を名乗っていたけど、ネタとは裏腹に私生活はハリガネ“フォーク”やからな。 剛:当時からきちんと貯金もしてたしね(笑)。 礼ニ:あのときのハリガネロックはめちゃめちゃ勢いあったから。 ユウキ:中川家に追いつけ追い越せでハリガネロックをやって、賞とかも穫って。その後クソみたいな扱いになって、どうしたらいいのか。そこで、俺らが救い求めた場所が「オンバト(爆笑オンエアバトル)」だった。 剛:俺らはオンバトはハマらなかったな。 ユウキ:やっぱりハマるハマらないはあるからな。でもハリガネロックは自らハメにいったのよ。 礼ニ:それをできるのがすごいわ。 ユウキ:1回目に出たときが5位で落ちかけたんだけど、3本のネタの良い部分だけを継ぎはぎして1本にしてみたのよ。そしたら、当時の最高記録を叩き出して。それが良いのか悪いのかわからなかったけど、続けていったんよ。「M-1」では継ぎはぎのネタはアカンとされていたから……結果的には、やり方が間違っていたのかもしれないけど。 ユウキロックと中川家07礼ニ:でもさ、半信半疑だったやろ。「M-1」みたいなのって。その後どうなるのか想像できた? ユウキ:いや、当時はなんのこっちゃわからんかった。でも中川家は自分らが決勝でるとは思っていたやろ? 剛:まったく。俺らはもう無理矢理だったし。勝手に入れられて。「賞金の1000万なんかいりませんから、僕らのことはそっとしておいてください」って会社に言ったら、「なんや逆らうんか」と脅されて! ユウキロックと中川家08礼ニ:そんなんが大丈夫な時代だったから(笑)。 剛:エントリー費で2000円を払わないといけなかったんだけど、「お金ないんで無理です」って。そしたら貸してもらえて。1回戦ではネタ3分なのに、8分もやったよ。ずっと終了のパトランプが回っていた(笑)。 礼ニ:最初は変な音楽がなるんだけど「わ、なんか電車きた」とか言いながらずっと無視して。 剛:みんな番号札を付けて出るんだけど、俺らはわざと外して。そんくらい抵抗していたのよ。 ユウキ:中川家ワルいな~! 礼ニ:あのときはみんなそうだったでしょ。得体の知れない大会で。 ユウキ:俺らは会社がやることだから、まあ出ないとアカンのやろなって。出たら出たで、俺は「決勝いくんやろな」って確信してたよ。だから、いざ決勝進出を伝えられてもそんなに驚かなかったし。ほんで、ゴールデンでやることなんかない時代やから、入り時間の早さに驚いた。 礼ニ:13時入りや。13時なんて、マイクの高さを合わせるだけや。あとは全部、自由時間(笑)。 ユウキ:出番を待つ時間、ゴールデンやから緊張はするし。いま思うと、あのときの「M-1」がゴールデンで漫才をやる最初のテレビだった。いわば「世間に提示する漫才」の9組に自分が入れたことは誇れるなって。 礼ニ:昔の2丁目劇場の頃からワケのわからんリーグ戦とかトーナメントに参加させられて。支配人が裸のままで渡してくる賞金2万円とかを必死になって取り合って。結局そこで頑張っていた2組が決勝に残ったワケやん。 剛:ホンマそれがうれしかったよ。 ユウキ:まあでも、一緒に「M-1」の決勝へ行けたからこそ、中川家の背中に触れた、と思えたのかなぁ。 礼ニ:「M-1」は吉本がどうたら(※ひいきされているんじゃないか)とか言うヤツがおるけど、層がちゃうと。そもそも戦ってきている人数がちゃうねん。場数が全然違う。ほかには悪いけど。 ユウキ:自分たちが出ていた頃の「M-1」は、負けたら命をとられたぐらいの感じだった。3回出たけど勝てなくて、4回目は出られなかった。このままだと殺されると思って(笑)。準決勝で負けました、だとすごくダメでしたって思われる時代だったから。いまは出られる年数なら全部出るぐらいだから、重みが変わったのかなって。 礼ニ:2回目が終わったあと、しばらく漫才やらなかったときがあったやろ。コントやってて。なんでそんなことするんやろうと思っていたよ。 ユウキ:コントやってたけど、全然ウケへん。 剛:起伏が激しいねん(笑)。 ユウキ:結局、自信が足りないからあっちへこっちへと行こうとしちゃったんやろな……。 ユウキロックと中川家09
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相方…そしてライバルの存在を振り返る
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明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

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芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

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