「M-1」の審査員に問われる“責任を負う覚悟”
礼ニ:それで今後、ユウキはどうするの? 講師として若手のネタを見るのもいいけど、一応まだプレイヤーでしょ。
剛:「R-1ぐらんぷり」あるで。
ユウキ:そういうことか。聞かれるとは思っていなかったから……。
剛:いま漫談やってる人おらんで。いっつも思うんだけど、やったらええのに。
礼ニ:やっぱり生で舞台に出とかんと。感覚が鈍るで。ユウキは落語とか向いてそうやけど、みんなやっとんねん。せやから、昔のNSCのときみたいに原点へ帰って、シンプルでオーソドックスな感じでやってほしい。いろいろ勉強してるからできるやろ。
剛:落語に片足突っ込みながら漫談とか?
ユウキ:だれの弟子になったらええの。
礼ニ:いっそ、志の輔師匠とか?
ユウキ:事務所離れて! たしかに、志の輔師匠の落語はめっちゃ聞くわ。
礼ニ:落語聞いとるやん(笑)。まあ、裏方の仕事もあるだろうけど、もうちょい表に出てね。あれ、ユウキが「M-1」のとき、大阪でラジオやってるの知っとるで。生放送を見ながら実況しとるの。めっちゃおもろいで!
剛:ちなみに、何年の「M-1」がアカンかった?(笑)
礼ニ:そんなん好みやから(笑)。俺らがアカンと言われることもあるしな。
ユウキ:ほんなら言うわ。2007年のサンドウィッチマンより後のやつが、どうしてもチャンピオンのネタが印象に残ってなくて。その頃ちょうど、「
2位が売れる」とか言われだしていたんやけどな。2008年、NON STYLEが優勝して、オードリーが2位だった。2009年、パンクブーブーが優勝したときは笑い飯が「鳥人」のネタで2位。正直なところ、2位のほうが印象に残っている。でも笑い飯はずっとインパクトでチャンピオンを潰してきたにも関わらず、奇しくも2010年に自分たちが優勝したときは、2位のスリムクラブにインパクトで潰されていたという……。
中川家:あー、たしかに。
ユウキ:その流れって、審査員をやっている礼ニならわかると思うんだけど、“審査員が責任を感じてしまう”からやないかな。責任というのは、芸能人って芸能人のネタを嫌うやん。押したことによって責任を負うのが嫌やのかな。チャンピオンとしてどっちがええのか、ではなく。たとえば、「THE MANZAI」でもパンクブーブーが優勝したけど、ネタの印象としてはナイツの「のりぴー!」ってほうがインパクトがあった。そう思うと、“
審査員の責任”ってのが問われているのかなと。
礼ニ:それ以降、「M-1」って本当に人気が出てきたしな。テレビ的な見せ方とかもあるのかもしれないけど、準決勝の審査をきっちりとやらなアカンのでは。
剛:俺も準決勝から見ているけど、「なんでコイツらが」ってのも多いからな。
礼ニ:じつは準決勝がいちばん大事やで。その後テレビに出れる出れない、芸人の人生が決まるのやから。
ユウキ:本番が始まるまで独特な感じがあるよな。その経験があると、大きかったりもする。
礼ニ:そういうのをわかっているユウキに準決勝の審査をやってほしい。
ユウキ:いや~、そんな責任負いたくないわ~。
礼ニ:責任負えや! 漫才への恩返しやろ!
剛:いままでの信頼と実績(笑)。
礼ニ:なんで俺らがこんなことを言うのかといえば、俺らもまだ現役でやっているから。だからこそ、「M-1」はちゃんとせなアカン。
ユウキ:準決勝とか見に来るお客さんって、いつも劇場に足を運んでいる人が多いから。そのぶん、審査員を悩ましている部分もあると思うよ。その笑いが、たとえばテレビ的ではない場合もあるから。
礼ニ:事情があることもわかっとるねん、“
TVショー”ってことも。
剛:でも視聴者もバカじゃないから、もうバレとるねん。
礼ニ:だから、ほんまにおもろいヤツを決勝に行かせなきゃ。
ユウキ:これは貴重な意見やな。今日は本当にありがとうございました!
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<取材・文/藤井敦年、撮影/林紘輝>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):
@FujiiAtsutoshi